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Alphabet(GOOG) クラウド受注残4,600億ドルと細る人間の検索 — 広告を見せる商売からAIに計算力を売る商売へ

Alphabetの2026年1〜3月期は売上高1,099億ドル(前年同期比+22%)、クラウド部門は+63%と加速し、契約済みでまだ売上に計上されていない「受注残」は4,600億ドルを超えた。一方で、株価は5月の高値399ドルから約11%調整し、自社株買いはゼロになり、847.5億ドルという過去最大級の増資に踏み切った。 人間がブラウザで検索して広告を見るという従来の稼ぎ方が細っていく中で、AI企業に計算力とデータを売る会社へ体質を変えられるか。その途中経過を数字で確かめる。

Alphabet(GOOG) クラウド受注残4,600億ドルとAIシフトの現在地

「Googleの検索はChatGPTに食われて、広告収入はいずれ崩れる」— 2年ほど前からよく聞く見立てである。自分も半分はそう思っていた。ところが2026年4月29日に発表された1〜3月期決算では、検索広告の売上がむしろ+19%と伸び、クラウドは+63%と過去にない伸び方をした。その一方で、会社は自社株買いを止め、社債と増資で10兆円規模の資金をかき集め、年間1,800億〜1,900億ドルという桁外れの設備投資に突っ込んでいる。株主への還元を後回しにしてでも、収益の軸足を「人間に広告を見せる商売」から「AIに計算力を売る商売」へ移す構えである。この記事では、ユーザーからの依頼が多かった3つの論点 — クラウドの予約済み売上(受注残)、人間のブラウザ検索・広告表示の先行き、AI向け検索APIの収益化 — を中心に、Alphabetの現在地を整理する。

検索の会社から「AIとクラウドの会社」へ — 収益構成の現在地

Alphabetは検索エンジンのGoogleを中核に、YouTube、Android、クラウド(Google Cloud)、自動運転のWaymoなどを抱える持株会社である。米NASDAQ上場で、時価総額は約4.4兆ドル。2026年6月29日にはダウ工業株30種平均(米国を代表する30銘柄で構成される株価指数)にVerizonと入れ替わりで採用された。

収益構成を見ると、直近四半期でも売上の約7割は広告である。検索結果に出る広告、YouTubeの動画広告、提携サイトに配信する広告(Googleネットワーク)を合わせた広告売上は772.5億ドル。ここに、Google OneやYouTube Premiumなどのサブスクリプション(定額課金)とスマートフォン等の機器で123.8億ドル、そしてクラウドが200.3億ドル乗る。つまり現時点ではまだ「広告の会社」なのだが、伸び率で見ると景色が変わる。広告が1桁台後半〜10%台で伸びる横で、クラウドは+63%、有料サブスクリプションの契約数は3.5億件まで積み上がった。5年前にはクラウドは赤字部門だったことを考えると、収益の柱が1本から3本(広告・サブスク・クラウド)に増えつつある途中だと個人的には整理している。

Q1決算 — クラウド63%増と、純利益+81%のからくり

結論から言うと、2026年1〜3月期は本業も好調だったが、見出しの「純利益+81%」をそのまま実力と受け取ってはいけない決算である。まずセグメント別の数字を確認する。

セグメント 売上高(億ドル) 前年同期比
検索広告ほか 604.0 +19%
YouTube広告 98.8 +11%
Googleネットワーク 69.7 -3.9%
サブスク・機器等 123.8 +19%
Googleクラウド 200.3 +63%
その他(Other Bets等) 2.3
合計 1,099.0 +22%

出典: Alphabet 2026年第1四半期決算発表資料(2026年4月29日)。「その他」はOther Betsとヘッジ損益の合算。

目を引くのはクラウドの中身である。売上+63%に加えて、部門の営業利益は22.0億ドルから66.0億ドルへほぼ3倍になり、営業利益率は17.8%から33.0%へ跳ね上がった。データセンターは建てるほど赤字になりがちな商売だが、AI需要で稼働率が上がり、規模の利益が出始めている。全社の営業利益は397.0億ドル(+30%)、営業利益率は36.1%と2ポイント改善した。

一方で「純利益625.8億ドル(+81%)、EPS(1株当たり利益)5.11ドル(+82%)」という数字には注意がいる。営業外の「その他収益」が377.2億ドルもあり、その大半は保有する非上場株式の未実現評価益 — つまり、出資先の評価額が上がったことによる帳簿上の利益で、現金は入ってきていない。Alphabetは生成AIのAnthropicや宇宙開発のSpaceXなどに出資しており、バランスシート上の非上場有価証券は3ヶ月で687億ドルから1,069億ドルまで膨らんだ。本業の伸び(営業利益+30%)は立派だが、純利益の伸びの半分近くは出資先のAIブームの追い風だと分けて見るべきである。

受注残4,600億ドルの読み方 — 4割はAnthropic1社

今回の決算で市場が最も驚いたのがこの数字である。クラウドの受注残(契約済みでまだ売上に計上されていない将来の売上、英語ではbacklog)が、3ヶ月でほぼ2倍の4,600億ドル超になった。前四半期末の約2,400億ドルから、1四半期で2,000億ドル以上積み上がった計算になる。

会社の説明では、このうち約半分が今後24ヶ月で売上に変わる見込みである。単純に割ると年平均1,150億ドル。直近四半期のクラウド売上を年率換算すると約800億ドルなので、すでに契約で担保された分だけで、今のクラウド事業の1.4倍の規模がある。クラウド事業の数年先の成長は、新規の営業努力ではなく「契約済み分を、データセンターを建てて消化できるか」という供給側の問題になっている。

ただし、この受注残には偏りがある。急増の主因は、AI開発企業Anthropicが5年間で約2,000億ドルをGoogleのクラウドとTPU(Googleが自社開発したAI計算専用チップ)に支払うと約束した大型契約で、受注残全体の4割超をこの1社が占めると報じられている(The Information(2026年5月5日))。契約の消化は2027年から本格化する。しかも、GoogleはAnthropicに最大400億ドルを出資する側でもある。出資先が自社のクラウドに巨額を支払い、その出資持分の評価益が自社の純利益を押し上げる — お金がぐるっと回る構造であり、AI業界全体でよく指摘される「循環取引」的な色彩は否定できない。Anthropicの稼ぎが計画に届かなければ、受注残の一部は絵に描いた餅になる。受注残は「確定した売上」ではなく「顧客の支払い約束」だという点は、割り引いて読む必要がある。

次に、依頼の2つ目の論点である「人間によるブラウザ経由の検索と広告表示は減っていくのか」を確かめる。結論から言うと、減っているのは「検索してリンクをクリックし、他人のサイトで広告を見る」という流れであって、Google自身の検索広告はまだ減っていない

まず外部の見立てから。調査会社Gartnerは2024年時点で、AIチャットの普及により従来型検索エンジンの検索量が2026年までに25%減るという予測を出していた(Gartnerプレスリリース(2024年2月))。実際、ChatGPTなどのAIチャットが処理する質問は世界のデジタル検索全体の1〜2割規模に達したという推計が複数出ており、Google検索からニュースサイトなど外部サイトへの送客が1年で3割前後減ったという測定もある。「調べものはまずAIに聞く」という行動変化は、確実に進んでいる。

一方でGoogle側の実績数字を見ると、検索広告の売上は+19%、経営陣は「検索クエリ数は過去最高」と説明している。矛盾しているように見えるが、からくりはこう理解している。検索結果の最上部にAIが要約を出すAI Overviewsや対話型のAI Modeが使われるほど、1つの調べものに対する検索行動はむしろ増える(追加の質問を重ねるため)。そしてGoogleの検索広告は検索結果ページの中に出るので、ユーザーが外部サイトへ出ていかなくても広告は表示される。割を食っているのは、クリックの受け皿だった外部サイトである。

それを裏付けるのが、セグメント表で唯一マイナスだったGoogleネットワーク(提携する外部サイトやアプリに広告を配信する事業)の-3.9%である。この部門は数年前から縮小が続いており、「人間がWebページを開き、そこに貼られた広告を見る」という広告在庫が構造的に細っていることを、Alphabet自身の決算数字が示している。あくまで個人の予想だが、この流れは戻らないと見ている。検索という行為の総量は増えても、その入り口がブラウザの検索窓からAIチャットへ移るほど、従来型のWebページ広告は減り、収益はGoogleの自社面(検索結果ページ・YouTube・AIアプリ)と後述のAPI課金へ寄っていく。

AIが検索の「客」になる — Gemini APIと検索グラウンディングの収益化

では、人間のクリックが減った分をどこで取り返すのか。依頼の3つ目の論点、AI経由の検索API収益である。

Googleは自社のAIモデルGeminiを、API(外部のプログラムから機能を呼び出す窓口)として開発者や企業に有料で開放している。決算説明でCEOのPichai氏が挙げた数字によると、顧客が直接APIで処理するトークン(AIが扱う文字データの単位)は毎分160億トークンを超え、前四半期比で+60%伸びた。さらに、AIの回答に最新のGoogle検索結果を裏付けとして与える「検索グラウンディング」という機能は、Gemini 3系では1,000クエリあたり14ドルの従量課金である。人間なら無料で使う検索を、AIは1回ごとにお金を払って使う。検索が「広告を見せる場所」から「AIに売るデータ商品」に変わりつつあるわけで、個人的にはここがAlphabetの一番面白い転換点だと見ている。

AI経由の収益はほかにも層がある。個人向けにはGemini搭載の有料プランを含むサブスクリプションが3.5億件。法人向けにはGemini Enterpriseの有料利用者が前四半期比+40%で伸びている。AppleがSiriの基盤にGeminiを採用する契約(年10億ドル規模と報じられる)のように、他社のAIサービスの裏側に入り込む売り方も始まった。そして対話型のAI Modeには広告枠を組み込む準備が進んでいると報じられており、AIチャット面の広告収益化はまだ手つかずの伸びしろとして残っている。

ChatGPTやClaudeもGoogleの検索APIを買っているのか — 答えはノー

ここで誤解しやすい点を先に片付けておく。「OpenAIのChatGPTやAnthropicのClaudeも、裏でGoogleの検索APIにお金を払っているのでは」と思われがちだが、現時点の答えはノーである。OpenAIは2024年にGoogleへ検索APIの利用を申し入れて断られており(「競合が多すぎる」という趣旨のGoogle社内メールが反トラスト裁判で開示され、ChatGPTの製品責任者も法廷で証言した)、ChatGPTの検索はMicrosoftのBingと自前のクローラーに頼っている。ClaudeのWeb検索も検索エンジンのBrave Searchを採用していると報じられている。前述の検索グラウンディングもGeminiモデル経由でしか使えない設計で、競合AIが自社モデルの裏側でGoogle検索の結果だけを買うことはできない。つまりGoogleは検索という最大の資産を競合AIにはあえて売らず、自社のGemini経由でしか使わせない囲い込みを取っており、検索API収益は今のところGemini利用者からのものに限られる。

ただし、この方針は自分の意思で選べなくなる可能性がある。反トラスト訴訟の是正措置には、「適格競合」に対して検索結果のシンジケーション(検索結果を商用条件で卸売りする契約)を提供する義務が含まれており、確定すればOpenAIやPerplexityが正式にGoogle検索を買える道が開く。Googleにとっては新たなAPI収益源になる一方、検索の堀を自ら開放することにもなる両刃の剣で、同社が控訴でこの義務を争っている(後述のリスク要因参照)のはそのためである。

このAPI事業の売上・利益はどのくらいか — 開示情報と個人の試算

では、AI企業向けの検索API・モデルAPI提供はいくら稼いでいるのか。正直に言うと、Alphabetはこの事業の売上も利益も単独では開示していない。会計上はGemini APIも検索グラウンディングもクラウド部門(四半期売上200.3億ドル、営業利益率33.0%)の中に溶け込んでおり、決算資料から直接読み取れるのは「顧客が直接APIで処理するトークンが毎分160億、前四半期比+60%」という量の情報だけである。

そこで、あくまで個人の試算だが規模感を置いてみる。毎分160億トークンを単純に1年分に延ばすと約8,400兆トークンになる。APIの料金は安いモデルで100万トークンあたり0.5〜3ドル、無料枠や割引、安価な軽量モデルへの偏りを考えて実効単価を100万トークンあたり0.3〜1ドルと仮定すると、年率換算でざっくり25億〜80億ドル規模という計算になる。クラウド部門の年率換算売上(約800億ドル)の数%〜1割弱であり、検索広告(年率2,400億ドル規模)と比べればまだ40分の1以下の小さな事業である。ただし成長率は社内で最も速い部類で、トークン処理量は3ヶ月で+60%(このペースが続けば1年で数倍)、外部の推計ではAPIの呼び出し件数も1年で2倍超になったとされる。利用する開発者が増えるほど検索グラウンディング(1,000クエリ14ドル)のような付随課金も積み上がる構造である。

利益率については開示がないので構造から考えるしかない。AIの推論(学習済みモデルに答えを出させる処理)は、NVIDIAからGPUを買って動かす他社と違い、Googleは自社設計のTPUで捌くため、チップメーカーに払うマージンの分だけ原価を低くできる。クラウド部門全体の営業利益率が1年で17.8%から33.0%へ跳ね上がった一因はここにあると見ている。一方で、中国発の低価格モデルとの競争でAPI単価自体には下落圧力がかかり続けるため、「量の成長が単価下落を上回れるか」がこの事業の利益の分かれ目になる。

もっとも、単価の面では楽観できない。検索広告はクリック1回で数ドル取れることもある高単価商売だが、API課金は薄利多売である。広告で失う1ドルをAPIとクラウドで取り返すには相当な量が要る。クラウド+63%という伸びと4,600億ドルの受注残は、その「量」が現実に積み上がっている証拠と読める一方、量を捌くための設備投資が次のセクションで見るように財務を圧迫している。

財務と株主還元 — 自社株買いを止めて増資と借金で投資する

Alphabetの財務はもともと現金の山で有名だった。2026年3月末時点でも現金・有価証券は1,268億ドルあり、総資産7,039億ドルに対して自己資本は4,787億ドル、自己資本比率(総資産に占める返す必要のないお金の割合)は68%と極めて健全である。ところがお金の使い方は一変した。1〜3月期の資金の動きを並べる。

項目(1〜3月期) 2025年 2026年
営業キャッシュフロー 361.5億ドル 457.9億ドル
設備投資 172.0億ドル 356.7億ドル
フリーCF(営業CF−設備投資) 189.5億ドル 101.2億ドル
自社株買い 150.7億ドル 0
配当支払 24.3億ドル 25.4億ドル
社債発行(純額) +311億ドル

出典: 前掲のAlphabet決算発表資料より作成。

設備投資は前年の2倍超に膨らみ、2026年通期の計画は1,800億〜1,900億ドル(従来計画から引き上げ)、2027年はさらに大きく増やすと会社は説明している。営業キャッシュフローが年1,800億ドル規模なので、稼いだ現金をほぼ全部データセンターに注ぎ込む計算になる。2025年通期に約730億ドルあったフリーCF(設備投資を引いた後に手元に残る現金)は、この四半期は101億ドルまで細った。

足りない分は外から調達している。1〜3月期に社債で311億ドルを調達し、6月には普通株の公募増資などで総額847.5億ドル(Berkshire Hathaway向けの100億ドルの第三者割当と、市場で少しずつ新株を売るATMプログラム400億ドルを含む)という、テック企業として過去最大級の株式調達を発表した(Alphabet増資プレスリリース(2026年6月3日))。当初800億ドルの予定が需要超過で増額されたこと、Berkshireが引受側に回ったことは需要の強さを示すが、既存株主にとっては発行済株式の2%前後の希薄化(1株当たりの取り分が薄まること)である。

株主還元は明確に後回しになった。自社株買いは前年同期の150.7億ドルからゼロへ。配当は1株0.22ドルへ5%増配したものの、利回りは0.24%で象徴的な水準にとどまる。買収も大型が続き、1〜3月期だけでクラウドセキュリティのWizを320億ドル(Google史上最大の買収)、データセンター向け電力開発のIntersectを47.5億ドルで完了させた。攻めの資金配分に全振りした四半期であり、「安定配当と自社株買いの成熟企業」を期待して持つ銘柄ではなくなったと個人的には受け止めている。

株価は1年で約2倍 — 5月ピークから11%調整の経緯

株価の現在地を時系列で追う。1年前の2025年7月初めは180ドル台だった。2025年9月に反トラスト訴訟の是正措置判決で懸念されていたChromeブラウザの売却命令を回避したこと、AIモデルGeminiの評価が上がったこと、そして決算のたびにクラウドの加速が確認されたことで株価は階段状に切り上がり、2026年4月29日のQ1決算後にもう一段上げて、5月13日に終値399.04ドル(ザラ場ベースの52週高値は404.47ドル)を付けた。1年でほぼ2倍である。

Alphabet(GOOG)の株価推移(1年日足)と主要イベント

そこから6月にかけては、上で見た847.5億ドルの増資発表(6月2日)による希薄化懸念に加え、6月22日にはGeminiの開発を率いてきたNoam Shazeer氏がOpenAIへ、AlphaFold(タンパク質構造予測AI)の共同開発者John Jumper氏がAnthropicへ移籍すると相次いで報じられ、1日で-6.7%の急落となった。同じ日にはYouTubeの未成年依存を巡る訴訟で再審請求が退けられるという司法面の逆風も重なった。月間では1年4ヶ月ぶりの大きな下げとなったが、6月29日のダウ平均採用初日には+4%と買い戻され、7月2日終値は356.18ドル。ピークからは約11%の調整、年初来では+13%という位置である。7月に入ってからはAppleに時価総額で抜かれ、米国市場の3位に後退した。

バリュエーションはPER(株価収益率=株価が1株利益の何倍か)で27倍台だが、前述のとおり直近1年のEPSには巨額の評価益が含まれており、これを除いた予想ベースのPERは29倍弱とやや上がる。PBR(株価純資産倍率)9.1倍、ROE(自己資本利益率)38.9%はいずれも評価益込みの数字である点も同様に割り引く必要がある。1年前のPERが20倍前後だったことを考えると、株価上昇の中身は「利益の伸び」と「評価の切り上がり」が半々で、以前のような割安感で買える水準ではなくなった。

Microsoft・Amazonとの比較

クラウドで競合するMicrosoft、Amazonと並べる。3社はビジネスモデルの土台が違う。Microsoftは法人向けソフトとサブスクが柱で営業利益率47%と最も筋肉質、Amazonは薄利の小売にクラウド(AWS)の利益が乗る構造、Alphabetは広告7割の収益にクラウドが急速に育っている段階である。

指標 Alphabet Microsoft Amazon
時価総額 約4.4兆ドル 約2.9兆ドル 約2.6兆ドル
売上高(直近12ヶ月) 4,225億ドル 3,183億ドル 7,428億ドル
クラウド成長率 ※ +63% +39% +28%
受注残 ※※ 4,600億ドル超 6,250億ドル 3,640億ドル
営業利益(直近12ヶ月・概算) 約1,380億ドル 約1,490億ドル 約850億ドル
営業利益率 32.7% 46.8% 11.5%
ROE 38.9% 34.0% 24.3%
PER(実績) 27.5倍 23.3倍 29.0倍
PER(予想) 28.7倍 21.1倍 29.0倍
PBR 9.1倍 7.0倍 5.9倍
配当利回り 0.24% 0.95% 無配
D/Eレシオ 0.20 0.30 0.53
EV/EBITDA 27.0倍 16.0倍 17.3倍

出典: Stock Analysis(2026年7月2日時点)および各社決算発表資料より作成。※クラウド成長率はGoogle Cloud・AWSが2026年1〜3月期、Azureは2025年10〜12月期の前年同期比で、期がずれている点に留意。※※受注残は対象範囲と時点が異なる: AlphabetはGoogle Cloud部門(2026年3月末)、Microsoftは全社の商用契約残(2025年12月末)、AmazonはAWS(2026年3月末)。営業利益は直近12ヶ月の売上高×営業利益率からの概算。

受注残の行は、3社の「AIブームの積み上がり方」がよく見える。金額ではMicrosoftの6,250億ドルが最大だが全社ベースの数字であり、クラウド部門同士で比べればGoogleの4,600億ドル超はAWSの3,640億ドルを上回る。そして3社に共通するのが特定AI企業への集中で、Microsoftは受注残の約45%(約2,810億ドル)がOpenAI1社、GoogleはAnthropicが4割超、AWSもOpenAIから合計1,380億ドル規模の契約を積んでいる。クラウド大手3社の将来売上は、まだほとんど利益の出ていないAI開発企業2社(OpenAIとAnthropic)の支払い能力に相乗りしているわけで、この構図はどの銘柄を持つにしても頭に入れておくべきである。

では、なぜGoogleだけがクラウド+63%と他の2社を大きく引き離せたのか。理由は3つあると整理している。第一に自社チップTPUの価格性能比である。AzureもAWSも大半のAI計算をNVIDIA製GPUに頼っており、NVIDIAの粗利(7割超と言われる)を仕入コストとして払っている。GoogleはTPUを自社設計して製造委託するため、この上乗せがない分だけ同じ計算力を安く提供でき、Anthropicが5年2,000億ドルの行き先にGoogleを選んだ決め手もTPUだったと報じられている。第二に、GoogleはGeminiという最上位クラスのAIモデル自体を持ち、モデルとインフラをセットで売れる。Microsoftのモデルは実質OpenAI頼み、AWSは有力な自社モデルを欠いており、「モデルもチップもデータセンターも自前」はGoogleだけである。第三に、身も蓋もない話だが母数が小さい。Google Cloudの年商はAWSの半分強しかなく、同じ金額の新規契約でも伸び率は高く出る。+63%という数字はこの3つの掛け算であり、規模が育つにつれて伸び率自体は必ず鈍化する点は織り込んでおきたい。

面白いのは市場の評価の分かれ方である。クラウドの伸び率で最も見劣りしないAlphabetがEV/EBITDA(企業価値が償却前利益の何倍か)27倍と3社で最も高く買われ、AI投資への警戒からMicrosoftは16倍まで売られて予想PER21倍と3社で最も安い。1年前は「AI出遅れ」を理由にAlphabetが3社で最も安かったので、評価は完全に入れ替わった。個人的には、この逆転自体が「期待で買われた銘柄は期待の剥落で売られる」という当たり前の教訓に見えて、今のAlphabetの評価水準には1年前のような余裕はないと感じている。

リスク要因

投資家として自分が気にしている順に並べる。

  • 設備投資の回収失敗 — 年1,800億〜1,900億ドルの投資は、AI需要が計画通り伸びる前提で組まれている。需要が鈍れば、急増中の減価償却費(Q1は64.8億ドルで前年比+44%)だけが利益を削る。フリーCFはすでに大幅に細っており、自社株買い停止と増資はその代償である
  • 顧客集中と循環構造 — 受注残の4割超が出資先でもあるAnthropic1社に依存する。同社の資金繰りや成長が想定を外れると、受注残の価値と保有株の評価益が同時に毀損する「二重の被弾」になり得る
  • 反トラスト訴訟の控訴審 — 検索の是正措置(既定検索契約の排他条項禁止・検索データの競合への共有義務)を巡り、Google側・司法省側の双方が控訴中で、司法省側はChromeやAndroidの分割を引き続き求めている。結論は2027年以降になる見込みで、上振れ・下振れ両方の不確実性が残る。広告技術を巡る別訴訟や、Playストア手数料を9〜20%へ引き下げるEpicとの和解による収益逆風もある
  • AI人材の流出 — 中核研究者2名の移籍報道だけで株価が1日7%近く動いた。AIモデルの競争力が少数の人材に依存していることを市場が意識し始めている
  • 検索広告の減速が「いつか」来る可能性 — 今は+19%だが、AIチャットへの行動シフトが臨界点を超えれば、7割を占める広告収益の減速は評価に直撃する。中国発の低価格AIモデルによるAPI価格競争も単価下落要因になる

まとめ — 個人的な見解

▶ 結論

Alphabetの2026年1〜3月期は、売上+22%・クラウド+63%・受注残4,600億ドル超と、AIシフトの成果が数字に出た決算だった。ただし純利益+81%の半分近くは出資先の評価益であり、受注残の4割はAnthropic1社の支払い約束である。株主還元を止めてまで年1,800億ドル超を投資する姿は、「広告で稼ぐ成熟企業」から「AIインフラに全賭けする投資企業」への転換宣言に等しい。人間のブラウザ検索と外部サイト広告が細る流れは同社の決算(ネットワーク部門-3.9%)にも表れているが、検索API・サブスク・クラウドで取り返す設計は今のところ機能している。1年で株価2倍・予想PER29倍弱という現在の評価は、この転換が成功する前提をかなり織り込んだ水準である。

率直に言うと、この銘柄の判断は「Googleを信じるか」ではなく「AI需要の持続を信じるか」に置き換わったと思っている。受注残も評価益も増資マネーも、すべてAIブームの持続を前提に積み上がっており、良くも悪くもNVIDIAと同じ土俵に乗った。一方で、検索+19%という数字は「AIに食われて終わる」という2年前の悲観論への、現時点では最も説得力のある反証である。検索の入り口がAIに変わっても、そのAIが答えを作るのにGoogleの検索インデックスと計算力を使い、対価を払う — この構図が続く限り、収益の器は変わっても水は流れ込み続ける。自分が確かめたいのは器の乗り換えの速度であり、四半期ごとに「ネットワーク部門の減少幅」と「クラウド+サブスクの増加額」を並べて、置き換えが追いついているかを見ていくつもりである。

※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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