MetaやSpaceXが余ったGPUを貸し出すのは、GPUが余って値崩れする前ぶれとは見ていない。月9億ドルを超える賃料を払ってでも借りたい会社が並んでいる。CUDA(NVIDIAのGPUを動かすためのソフトウェア開発基盤)の優位も当面は続きそうだが、学習済みのAIを動かす「推論」では、GoogleやMicrosoftの自社チップへの置き換えがすでに始まっており、独占が崩れるとすればここからだ。
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「MetaやSpaceXが余ったGPUを他社に貸し出すらしい」というニュースを見て、「GPUはもう余り始めたのか。NVIDIAの快進撃もそろそろ終わりか」と不安になった人は多いのではないか。実際、7月1日にMetaの計算能力の外販構想が報じられた日は、AI関連株が広く売られた。一方で当のNVIDIAは、直近の決算で売上高が前年同期比85%増えている。GPUは余っているのか、足りないのか。決算の数字、貸し出し契約の中身、競合チップの公表された仕様をもとに確かめた。
売上の9割がデータセンター向け、AIの設備を一式で売る会社に
NVIDIAはもともとパソコンゲーム用の画像処理チップ(GPU)の会社だが、今は売上のほとんどをデータセンター向けで稼ぐ。直近四半期の売上高816億ドルのうち752億ドル、率にして92%がデータセンター向けで、ゲームなどほかの事業は1割に満たない。データセンター向けには、AIの学習や推論に使うGPU本体に加え、GPU同士をつなぐネットワーク機器(NVLink、InfiniBand、Spectrum-Xイーサネット)も含まれ、AIを動かす設備を一式で売っている。
売り方も、チップを1個ずつ売る形から、サーバーを収めた棚(ラック)やデータセンター全体の単位で売る形に変わってきた。2026年に量産が始まった新世代の「Vera Rubin」も、CPU・GPU・ネットワークを一体で設計したシステムとして出荷される。買い手はGoogle・Microsoft・Amazon・Metaのような超大手クラウド企業(ハイパースケーラー)と、OpenAIやxAIのようなAI開発企業に偏っており、この偏りは後で書くリスクにもつながる。
売上+85%・粗利率75%の直近決算、数字にはまだ出ていない減速
直近の決算には、GPUの需要が落ちている兆しは見当たらない。NVIDIAの会計年度は1月末締めで、2026年5月に発表した2027年1月期第1四半期(2026年2〜4月)の決算は次のとおり(NVIDIA 2027年1月期Q1決算プレスリリース)。
| 項目 | 2027年1月期Q1実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 816億ドル | +85% |
| うちデータセンター | 752億ドル | +92% |
| 粗利率(売上総利益率) | 74.9%(GAAP) | — |
| 純利益 | 583億ドル(GAAP) | EPSで+214% |
| 次四半期の売上ガイダンス | 910億ドル(±2%) | — |
売上高816億ドルは、前の期(2026年1月期)の通期売上高2,159億ドルの4割近くにあたり、それを1四半期で稼いだ。会社が示した次の四半期の売上見通し(ガイダンス)は910億ドルで、さらに1割以上増える。この910億ドルには中国向けのデータセンター製品を含めていない。中国での販売が再開されれば上振れの余地があるが、再開できるかどうかは規制しだいだ。
純利益は中身に注意がいる。米国会計基準(GAAP)の純利益583億ドルは、調整後(非GAAP)の455億ドルを大きく上回る。差の主な理由は、NVIDIAが出資しているAI企業の株の評価益で、本業のもうけではない。利益の勢いを見るなら、評価益を除いた調整後のEPS(1株あたり利益)1.87ドル、前年同期比140%増のほうが実態に近い。
借金はほぼなく、1四半期で200億ドルを株主に還元
自己資本1,955億ドルに対して有利子負債はごくわずかで、D/Eレシオ(自己資本に対する負債の倍率)は0.07倍、手元の現金と有価証券は約500億ドルある。お金のかかる製造は台湾のTSMCに任せ、自社の工場を持たないので、稼いだ現金がそのまま手元に積み上がる。
株主への還元も増えた。直近の四半期だけで自社株買いと配当を合わせて200億ドルを株主に返し、800億ドルの自社株買い枠も新たに設けた。四半期配当は1株0.01ドルから0.25ドルへ25倍になったが、配当利回りは0.5%ほどで、還元の中心は自社株買いだ。1株あたり利益が伸び続ける限り、この還元は無理なく続けられる。
今も大きいCUDAの優位と、増えたCUDAを使わずに済む場面
CUDAはNVIDIAが約20年かけて育ててきたGPU用のソフトウェア開発基盤で、AIの計算に使う数学の部品集(ライブラリ)、複数のGPUで学習を分けて進める仕組み、主なAIフレームワークとの接続までを一式で提供する。開発者は世界で400万人を超え、動作を確かめたアプリやAIモデルも数千件ある。他社が性能の近いチップを作っても、乗り換えるには既存のコードの書き直し、エンジニアの学び直し、検証のやり直しが要る。その費用がかさむので、顧客はNVIDIAから離れにくい。
市場の推計では、データセンター向けGPUの売上に占めるNVIDIAのシェアは、2024年ごろの約9割から2026年には8割台半ばに下がった。まだ大半を握っているが、少しずつ削られている。シェアを取っているのは、CUDAと同じものを作った会社ではなく、CUDAが要らない用途を選んだ会社だ。
PyTorchのような主なAIフレームワークや、OpenXLAのような変換の仕組みが育ち、開発者がCUDAを直接書かなくても、GPU以外のチップでAIを動かせるようになってきた。AIの計算の中心も、「学習(モデルを作る計算)」から「推論(できたモデルを動かして答えを作る計算)」に移りつつある。推論は決まったモデルを効率よく動かす仕事なので、CUDAの豊富な開発機能より、電力あたりのコストで勝負が決まる。CUDAの強みが最も生きにくい推論の市場から、先に競争が始まった。
NVIDIA自身も、この点を意識しているとみられる。2025年12月には推論専用チップの新興企業Groqの技術を約200億ドルで使う権利を得て、創業CEOを含む主要メンバーを迎え入れた(Fortune 2026年1月5日)。GPUだけでは推論の市場を取りこぼしかねないと、NVIDIA自身も認めた形だ。
高い賃料でも借り手がつくMetaとSpaceXの余剰GPUの貸し出し
公表されている契約を見ると、GPUはだぶついておらず、高い賃料を払ってでも借りたい会社がいる。
SpaceXのグループが確保したGPUの計算能力は、すでに外部に貸し出されている。報道によると、Anthropicはメンフィスのデータセンターの計算能力を月12.5億ドルで2029年まで借りる。GoogleもNVIDIA製GPU約11万個分の計算能力に、2026年10月から月9.2億ドルを払う契約を結んだ(CNBC 2026年6月5日)。自前でチップを設計できるGoogleが、年に換算して1兆円を超える賃料を払ってでも、今すぐ計算能力を確保しようとしている。
Metaについては7月1日、余ったAI設備を外部に売る「Meta Compute」構想が報じられ、この日はAI関連株が広く売られた(TechCrunch 2026年7月1日)。Metaが余らせるほどGPUはだぶついている、と受け取られたためだ。ただ中身を見ると、Metaは自社のAI開発のために巨大なデータセンターを先に建てており、自社で使い切るまでの空き容量を貸す計画だ。借り手がつく見込みがあるから事業にするのであって、借り手がいなければこの構想は成り立たない。
市場全体のデータも、GPUが足りないことを示している。クラウドでGPUを時間貸しするサービスは需要が供給を上回ったままで、発売から3〜5年たった古い世代のGPUの中古価格はむしろ上がっている。需要が本当にしぼみ始めたなら、真っ先に値崩れするのは中古品と時間貸しの料金のはずだが、実際の動きは逆だ。
ただ、貸し出しビジネスが広がることが数年先のリスクになる、という見方には同意する。ハイパースケーラーが「使い切れない分は貸せばいい」と考えて発注を増やしているなら、どこかで実際の需要とずれが出る。半導体はこれまでも好不況を繰り返してきたが、品不足が在庫の山に変わるときは、まず転売や賃貸の価格が崩れた。中古GPUの価格と時間貸しの料金が下がり始めたら、少し遅れてNVIDIAの新品の需要も落ちると考えて、この2つを先に動く指標として追っている。今のところ、値崩れの兆しは出ていない。
推論から攻める競合のGoogle・Microsoft・AMD・Intel
最先端のモデルの学習では、NVIDIAがほぼ独占したままだ。競合はほぼすべて推論からNVIDIAの市場を取りに来ており、推論では置き換えが始まった。
Google TPU: 外部のAI企業が100万個を発注
GoogleのTPU(AIの計算専用に設計した自社チップ)は第7世代の「Ironwood」になり、主に推論向けとして外部にも提供されている。大きかったのは外部の顧客がついたことで、AnthropicがBroadcomを通じてTPUを約100万個、210億ドル規模で発注し、2026年4月には次の世代のTPUを最大5ギガワット分確保する契約も結んだ(CNBC 2026年4月6日)。最先端のAI開発企業が本番の学習と推論をTPUで動かせば、NVIDIAのGPUがなくても最先端のAIを作れることになる。競合の動きの中で、NVIDIAにとって最も大きな痛手はこれだろう。この契約をGoogleの側から見た内容は、Alphabetの記事でクラウド受注残4,600億ドルの中身として書いた。
Microsoft Maia: Copilotの推論の自社チップへの移行
Microsoftは2026年1月に推論専用の自社チップ「Maia 200」を投入し、Azureのデータセンターで自社のAIサービス(CopilotやOpenAIのAPI)の処理に使い始めた。TSMCの3nm世代で製造し、216GBの高速メモリ(HBM3e)を積む。外部には売らず、自社サービスの原価を下げるのが狙いだ。NVIDIAの大口顧客が推論の処理を少しずつ自社チップに移すので、その分だけNVIDIAの将来の売上が削られる。
AMD: OpenAIの大型契約を得たGPUの競合
GPUで正面から競うAMDは、OpenAIから6ギガワット分のGPUの採用契約を得ており、2026年後半から供給が始まる。2026年末に出す予定のMI400シリーズは1個あたり432GBのHBM4メモリを積み、メモリの容量と転送速度では同じ時期のNVIDIA製品を上回ると公表している。メモリの大きさは巨大なモデルを推論で動かすときに有利になるので、AMDも推論で勝負することになる。ただ、後の表のとおり、売上はNVIDIAの約7分の1、営業利益率は約5分の1にとどまる。
Intel: 高価なメモリを使わない安い推論チップ
Intelはデータセンター向けGPU「Crescent Island」を発表しており、顧客向けの試作品の出荷は2026年後半、量産は2027年の計画だ。高価なHBMの代わりに安いLPDDR5Xメモリを480GB積み、空冷のサーバーで動かせるよう電力を抑えた。性能ではなく値段で勝負し、推論を安く大量に動かす用途を狙う。出遅れてはいるが、推論の市場が広がるほど、そこそこ速くて安ければよいという買い手は増える。
新興チップ企業: 大手と組んで初めて届く量産の規模
推論専用の新興企業では、ウェハー1枚分の大きさのチップを作るCerebrasがOpenAIから100億ドル規模の供給契約を得て株式上場を申請し、GroqはNVIDIAに技術ごと取り込まれた。新興企業は、有力なAI企業と組むか大手に取り込まれて、ようやく量産の規模に届く。単独でNVIDIAのシェアを大きく変える存在には、まだ見えない。
学習ではNVIDIAが先行、Rubinの量産も前倒し
NVIDIAは、新世代のVera Rubinの量産を前倒しして対抗している。当初の計画より約2四半期早い2026年前半に量産を始め、2026年後半には主なクラウド各社のデータセンターに入り始める。製品の世代交代を約1年ごとに速め、競合が追いつくころには次の世代を出す。最先端の学習用途では、当面はNVIDIAの先行が続きそうだ。
推論で下がりやすいシェアと、学習より速く伸びる市場
推論でも最大手のNVIDIA、専用品にはどのモデルでも動く柔軟さで対抗
市場の推計には幅があるが、NVIDIAのシェアは学習向けのチップで9割を超え、推論向けでは6〜7割ほどとされる。自社チップに押されてはいるが、推論でも最大手はNVIDIAのままだ。推論がASIC(特定の処理専用に設計したチップ)に取られて終わる、とは言い切れない理由もある。
まず、推論の性能そのものを引き上げている。2026年後半に出荷が始まるVera Rubin NVL72(GPU72個をラック1台にまとめたシステム)について、会社は前の世代のBlackwellと比べて推論性能が最大5倍、トークン(AIが文章を処理する最小の単位)あたりのコストが最大10分の1になると説明している。メーカーの公表値なので割り引いて見る必要はあるが、推論の安さでASICに正面から挑む数字だ。
専用チップには、自社の専用品で対抗し始めた。長い文書やプログラム全体を一度に読み込ませる推論のために専用のGPU(Rubin CPX)を出し、汎用のGPUと専用チップの間を自分で埋めている。Groqの技術と人材を取り込んだのも同じ狙いで、推論の用途ごとに専用品をそろえる方向に品ぞろえを変えつつある。
推論の費用は、ハードだけでは決まらない。多くのGPUに推論の仕事を効率よく割り振るソフト(NVIDIAのDynamoなど)の出来で、トークンあたりのコストは大きく変わる。ここでは、CUDAから積み上げてきたソフトウェアの蓄積が生きる。
もう一つは、どのモデルでも動く柔軟さだ。ASICは設計した時点で想定したモデルの形に合わせて作るので、決まったモデルを大量に動かす用途では電力あたり3〜5倍の効率を出せるが、モデルの構造が変わると強みが薄れる。AIモデルの主流の形は年単位で入れ替わっており、どのモデルが勝ってもそのまま動くGPUを一定量持っておくことには、保険としての価値がある。ハイパースケーラーが自社チップを持ちながらNVIDIA製品も買い続けているのは、この使い分けに理由があるからだ。
一方で、押されている側の数字もある。2026年の出荷台数の伸びは、クラウド大手の自社ASICが4割超と、GPUの1割台を大きく上回る見込みで、AI用サーバーの出荷のうちASICを積んだ機種が3割近くになるとの推計もある。弱気の予測では、NVIDIAの推論シェアが2028年に2〜3割まで落ちるとするものまである。個人的には、この予測は決まった推論がすべてASICに移るという極端な前提に立ち、柔軟さの価値を軽く見すぎていると思う。それでも、シェアが下を向いていることは否定しにくい。
学習より速く伸びる推論の需要、単価が下がっても増える総額
ここから先は、各社・調査会社の将来予測を多く含む。数字は幅を持って読んでほしい。
推論の需要は増える一方だ。AIの計算全体に占める推論の割合は、2023年の約3分の1から2026年には約3分の2に増えたと推計され、AIモデルを作ってから使い終わるまでの費用の8〜9割は推論にかかるという見方が一般的になった。推論の市場は2025年の約1,000億ドルから2030年に約2,500億ドルへ、年2割のペースで伸びるとの予測があり、2030年には学習の市場の何倍もの規模になるとの試算もある。
伸びるのは、AIの使われ方が変わるからだ。人がチャットで質問して答えをもらう使い方から、AIエージェント(人の指示を受けて、調べ物・道具の呼び出し・検証までを自分で繰り返すAI)に仕事を任せる使い方に移ると、1つの作業で使うトークンはチャットの5〜30倍になるとの分析がある。答えを出す前に長く「考える」タイプのモデルが広がることも、トークンを増やす。米国の大手投資銀行は、世界のトークン処理量が2026年からの4年で20倍を超えると試算している。
トークンあたりの処理コストはチップとソフトの改良で年6〜7割のペースで下がる一方、安くなった分だけ使う量が増え、企業がAIの推論に払う総額はむしろ増えた。電気代が下がると電気を使う機械が増え、電力の消費全体は増えるのと同じ動きで、今は値下がりが用途を広げている段階にある。
NVIDIAに投資する立場でまとめると、推論でのNVIDIAのシェアは下がっていく可能性が高いが、推論の市場は学習より速く伸びるので、シェアが下がってもそのまま売上が減るわけではない。あくまで個人の予想だが、推論の売上の金額は当面伸び続け、競争の圧力は売上より先に値段、つまり75%という高い粗利率に出てくるだろう。推論での競争が激しくなるほど、シェアの数字より、値引きが始まったかどうかを粗利率で見るほうが役に立つ。
NVIDIA・AMD・Broadcomの財務: 最も高い利益率と最も低い予想PERのNVIDIA
比べる相手は、GPUで直接競うAMDと、ハイパースケーラーの自社チップの開発を多く請け負うBroadcomの2社だ。
| 指標 | NVIDIA | AMD | Broadcom |
|---|---|---|---|
| 売上高(直近12ヶ月) | 2,535億ドル | 375億ドル | 755億ドル |
| 営業利益率 | 64.0% | 11.8% | 44.2% |
| 純利益率 | 63.0%※ | 13.4% | 38.9% |
| ROE(自己資本利益率) | 114.3% | 8.1% | 37.3% |
| PER(実績) | 29.8倍 | 172.7倍 | 60.0倍 |
| PER(予想) | 19.6倍 | 59.4倍 | 22.9倍 |
| PBR(株価純資産倍率) | 24.1倍 | 13.1倍 | 19.6倍 |
| 配当利回り | 0.51% | なし | 0.72% |
| D/Eレシオ | 0.07 | 0.06 | 0.74 |
| EV/EBITDA(企業価値倍率) | 28.3倍 | 112.5倍 | 41.8倍 |
各社決算資料および市場データより作成(2026年7月2日時点、直近12ヶ月ベース)。※NVIDIAの純利益には出資先AI企業株式の評価益が含まれ、純利益率を押し上げている。
3社の中で業績が最も強いNVIDIAの予想PERが、最も低い。営業利益率64%、ROE114%は半導体メーカーとして異例の高さなのに、予想PERは19.6倍で、AMD(59.4倍)の3分の1しかない。市場は、NVIDIAの今の利益はどこかで減り、AMDの利益はこれから何倍にもなると見込んで値段をつけている。どちらの見込みが当たったかは、数年後の決算で分かる。
稼ぎ方も違う。AMDはNVIDIAと同じくGPUとソフトウェアを売る唯一の同業で、勝てば得るものは大きいが、CUDAにあたる開発基盤が弱く、それが利益率の差(64%対12%)に出ている。BroadcomはGoogleのTPUやOpenAIの自社チップの設計・製造を請け負う裏方で、どの会社の自社チップが勝っても手数料が入る。NVIDIAの独占が崩れたときに最も得をするのは、AMDよりBroadcomの可能性が高いと個人的には見ている。
時価総額4.7兆ドル、20倍前後まで下がった予想PER
7月2日の終値は194.83ドルで、時価総額は約4.7兆ドルと世界最大だ。株価は2025年7月の157ドル前後を底に上がり、2026年5月14日に236.54ドルの高値をつけた後、6月末にかけて下げて、高値から約18%安い水準にある。6月下旬には1週間で8%を超えて下げる場面もあり、7月1日のMeta Computeの報道が下げを速めた。直近25日の平均株価(約206ドル)を5.6%下回る一方、200日の平均(約191ドル)はまだ2.0%上回っており、長い上昇の流れが続くかどうかの分かれ目にある。
PERは実績で約30倍、予想で19.6倍まで下がった。株価の上昇より利益の伸びのほうが速く、PERは過去10年の平均(50倍超)を大きく下回る。S&P500全体の予想PERは20倍台前半なので、世界一の時価総額の会社が、売上が85%伸びている年に、市場の平均並みの倍率で売買されていることになる。数字の上では、将来の夢に払う値段から、足元の利益に払う値段に変わってきた。
ただ、これを割安になったと読むのは危うい。予想PER19.6倍は、来期も予想どおりの利益が出ることが前提で、その予想利益はAI投資のブームが続くことに頼っている。ブームが冷めて売上の伸びが止まれば、利益の予想が引き下げられ、後から見ればPERは安くなかったことになる。PERの低さは、この利益の水準がいつまで続くかを市場が疑っている表れと見るほうが実態に合う。予想利益が減って株価が崩れる流れは、AIバブルを「稼ぎすぎ」の面から見た記事で詳しく書いた。
リスク: AI投資の減速、自社チップ、中国規制、顧客への出資
影響が大きいと考えている順に並べた。
- AI投資の減速: 売上の9割がデータセンター向けで、その大半を少数のハイパースケーラーとAI開発企業が占める。彼らが投資を減らせば、その分がほぼそのままNVIDIAの売上減になる。半導体は好不況の波が大きい産業で、今回だけ例外と考える根拠はない。
- 推論での自社チップへの置き換え: Google TPU、Microsoft Maia、AmazonやOpenAIの自社チップが、AIの計算の半分以上を占めつつある推論の処理を自社に移し始めている。学習でのシェアが保たれても、市場全体でのNVIDIAの取り分は少しずつ小さくなりうる。
- 米中規制: 2025年には中国向けの輸出規制で45億ドルの在庫評価損を出した。規制は緩和と強化を短い間に繰り返しており、中国向けの売上はガイダンスから外したままだ。規制が再び強まれば、中国市場は現地のチップに置き換わり、戻らなくなる。
- 顧客への出資と売上の循環: NVIDIAはOpenAIをはじめ、顧客であるAI企業に大きく出資している。出資先がそのお金でNVIDIA製品を買うため、売上が実際の需要より膨らんで見えているのではないかという懸念が市場にある。ブームが続く間は表に出ないが、ブームが終われば売上と出資先の評価額が同時に減る。
- 株価の振れの大きさ: 業績が好調でも、報道一つでAI関連株がまとめて売られる状態が続いている。時価総額が大きく株価指数に占める比率も高いので、指数ごと売られる影響も直接受ける。
まとめと、定点観測している数字
結論
CUDAの優位は学習では今も大きく、400万人の開発者と確かめ済みのソフトの蓄積は、数年では崩れない。余剰GPUの貸し出しは、月9億ドルを超える賃料を払う借り手がいる売り手市場の表れで、中古GPUの価格と時間貸しの料金が崩れない限り、GPU余りを心配する段階にはない。競合の攻勢は本物だが、攻め口はほぼ推論に限られる。NVIDIAのシェアは、大きいまま少しずつ薄まる流れが最もありそうだ。推論の市場は学習より速く伸びるので、シェアが下がってもすぐに売上が減るわけではない。
予想PER19.6倍は市場の平均並みの倍率だが、AI投資のブームが続く前提の予想利益に基づく数字なので、割安とは言い切れない。
この銘柄で定点観測しているのは、次の数字だ。
- データセンター売上の、前の四半期からの伸び(伸びが小さくなるのが、最初の減速のサインになる)
- 中古GPUの価格と、GPUの時間貸しの料金(貸し出しの市場がだぶつけば、新品の需要より先に崩れる)
- ハイパースケーラー各社の設備投資計画が、上と下のどちらに直されるか
- 粗利率(推論で値下げの競争が始まれば、シェアの数字より先にここに出る)
次の決算は8月下旬の予定で、910億ドルのガイダンスに対する着地と、Meta Compute構想に触れるかどうかをまず確かめる。売上の92%を一つの用途に頼る会社は、決算が絶好調のときほど、その中に減速の兆しがないかを探すようにしている。十数年この市場を見てきて身についた習慣だ。
※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。