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ジャックス(8584) 今期の経常利益は46%減の110億円予想 配当200円は利益の9割

ジャックスは今期(2027年3月期)の経常利益を前期比46%減の110億円と予想し、中期経営計画で今期に見込んでいた250億円を大きく下回った。減益の主な理由は借り入れの金利の上昇で、前期の金融費用は65億円増えた。配当200円は据え置かれたが、今期の予想利益の約9割を配当に回す計算になり、利回りの高さより先に、利益が戻るかどうかを確かめたい。

ジャックス(8584)の銘柄分析

配当利回り5%超の高配当株として知られるジャックスが、5月15日の本決算で今期の大幅な減益を見込んだ。今期(2027年3月期)の経常利益の予想は110億円で、前期より46%少ない。2025年3月に発表した中期経営計画では今期に250億円を見込んでいたので、その半分にも届かない。決算の発表は取引時間中の15時で、取引が終わる15時30分までに株価は下げ、終値は前日比6.9%安の3,775円だった。利益が縮んでいる会社の高い利回りは、長く続かないことがある。何が起きているのかを、決算の数字から確かめた。

MUFGグループの信販会社、主力はクレジットとローンの保証

ジャックス(JACCS、証券コード8584)は、三菱UFJ銀行が大株主のMUFGグループの信販大手で、東証プライムに上場している。時価総額は約1,700億円(5月15日の終値で計算)。

項目 内容
上場市場 東証プライム(その他金融業)
大株主 三菱UFJ銀行(2008年からMUFGグループの一員。2025年には新しく発行した株も引き受けた)
主力事業 クレジット(買い物の分割払い、オートローン)、ペイメント(カード決済)、ファイナンス(銀行ローンの保証)
海外展開 ベトナム・インドネシア・フィリピン・カンボジアの4カ国で二輪・四輪ローンなど
営業収益の構成 国内約89%、海外約11%(2026年3月期)

銀行からの借り入れや社債、コマーシャル・ペーパー(期間が1年未満の短い社債)でお金を集め、消費者の分割払いやローンに回して、手数料や金利との差で稼ぐ。国内の営業収益のうち約4割がクレジット事業で、オートローンや住宅関連のローン、銀行ローンの保証も手がけている。

2025年2月には、マレーシアの中古車売買サイトを運営するCarsome社の傘下の金融会社(Carsome Capital社)の株式49%を取得すると発表した。海外は成長の柱と位置づけられてきたが、インドネシアの立て直しが遅れ、会社が中期経営計画を見直した理由の一つにもなった。

前期は計画どおり、今期は経常利益46%減の予想

5月15日に発表した2026年3月期の実績は、会社の計画をわずかに上回った。ただ、1〜3月の3か月で利益が大きく落ちている。

2026年3月期の通期実績

指標 2026/3実績 前期比 計画比
営業収益 1,923億円 +0.7% +0.4%
営業利益 204億円 -20.7% +2.1%
経常利益 202億円 -21.4% +1.3%
純利益 153億円 -17.8% -1.2%
EPS 380.28円 -29.1% —

経常利益は計画の200億円に対して202億円だった。一方、1〜3月(第4四半期)だけの経常利益は12億円で、前年の同じ時期より55.3%少ない。12月までの9か月で通期計画の95%を稼いでいたので、最後の3か月で利益がほとんど出なかったことになる。EPS(1株当たり利益)の減り方が純利益より大きいのは、2025年に三菱UFJ銀行に新株を割り当てて、株数が約28%増えたためだ。

アナリスト予想を54%下回った2027年3月期の通期予想

指標 2027/3予想 前期比
経常利益 110億円 -45.7%
純利益 100億円 -34.7%

今期の経常利益の予想は、IFISコンセンサス(アナリスト予想の平均)を54.2%下回った。2025年3月に発表した中期経営計画「Do next!」(2025〜2027年度)は、今期の経常利益を250億円、最終年度の2028年3月期を310億円としていた。会社は5月15日に、今期の計画を110億円に直し、最終年度の数字は取り下げると発表した。

経常利益はピークの3分の1に

決算期 営業収益 経常利益 EPS 配当 配当性向
2023/3 1,735億 318億 624円 190円 30.4%
2024/3 1,848億 331億 685円 220円 32.1%
2025/3 1,910億 258億 536円 190円 35.4%
2026/3 1,923億 202億 380円 200円 52.6%
2027/3予 1,925億 110億 223円 200円 89.5%

経常利益は2024年3月期の331億円がピークで、今期の予想はその3分の1になる。2024年3月期の220円には、創立70周年の記念配当10円が入っている。営業収益はほぼ横ばいなので、売上は変わらないまま、もうけの幅だけが縮んでいる。

減益の主な理由は金融費用の増加

前期の減益は、ほぼ金融費用の増加で説明がつく。借入金や社債、コマーシャル・ペーパーの利息などの金融費用は、250億円から316億円へ65億円増えた。経常利益の減少は56億円なので、金融費用の増加分のほうが大きい。会社は、国内の調達金利の上昇と、貸し付けが増えて借り入れも増えたことを理由に挙げている。

上がる借りる金利と、すぐには上げられない貸している金利

分割払いやオートローンの手数料・金利は契約したときに決まり、完済まで変わらない。新しい契約の金利は上げられるが、上げれば客がほかのローンに移る。ジャックスはオートローンの金利を上げてシェアを落とし、前期になって戻り始めたところだ。日銀の利上げで借りるコストが先に上がり、利ざやが縮んでいる。リース大手3社を比べた記事でも、既存の契約は固定の金利で、新しい契約で少しずつ上乗せしていくので、金利上昇の影響はゆっくり出ると書いた。ジャックスも同じ仕組みだが、影響が出るのはリース会社より早く、大きい。

借入金・社債・コマーシャル・ペーパーは、債権を担保にした借り入れを除いても約1.9兆円ある。借り換えが進んで、このうちの多くの金利が0.5%上がれば、費用は年に100億円規模で増える計算になる。1〜3月の経常利益が前年の同じ時期より55%減ったのは、この費用の増加が表に出始めたためと見ている。

今期に重なるシステム費用とインドネシア

会社は今期の計画を下げた理由として、金融費用のほかに2つを挙げた。データセンターの移転方法を変えてシステム費用が増えることと、インドネシアの業績が思うように戻らないことだ。インドネシアでは、返済の遅れが多い四輪車や中古二輪車のローンの受付を止めて立て直しを進めているが、取扱高が減った。海外の事業は前期も24億円の赤字で、赤字額は36億円から縮んだものの、黒字には戻っていない。

200円以上をめざす配当、今期は利益の9割

財務の特徴

指標(2026年3月期末) 数値
自己資本比率 7.9%(前期は6.5%。第三者割当増資で上がった)
借入金・社債など 約1.9兆円(債権を担保にした借り入れを含めると約2.9兆円)
現金・預金 約1,448億円
ROE(2026/3期) 5.6%(前期7.8%)
1株当たり純資産 6,625円

自己資本比率7.9%は低く見えるが、借りたお金を貸し付けに回す信販会社ではふつうの水準だ。

会社は200円以上をめざし、DOE 3%で計算すると約180円

中期経営計画では、配当をDOE(株主資本配当率)3.0%か配当性向40%の、どちらか高いほうを目安に決め、1株200円以上の安定した還元に努めるとした。5月15日の計画の見直しでも、この方針は変えていない。DOE 3%は、株主資本の3%を配当に回すという意味で、利益が減っても株主資本が大きく減らないかぎり、配当は一定額以上出る。期末の株主資本2,679億円から計算すると、DOE 3%は1株あたり約180円になる。今期の200円は、この計算で出る額より20円ほど上に置いた約束だ。

気になるのは配当性向の上がり方だ。2024年3月期の32%から、2026年3月期は53%、今期の予想では89.5%になる。利益の9割を配当に回すと、事業に回すお金はほとんど残らない。利益が戻らなければ、どこかで配当の方針を見直すことになりかねない。

実績のPERは10倍、今期の予想では17倍

指標 数値(2026年5月15日の終値で計算)
株価 3,775円(前日比-6.9%)
PER(2026/3実績) 9.9倍
PER(2027/3予想) 16.9倍
PBR 0.57倍
配当利回り 5.3%(年200円÷3,775円)
出来高(5/15) 302,900株(直前20営業日の平均の約4倍)

実績のPER 9.9倍、PBR 0.57倍だけを見ると割安に見える。ところが今期の予想利益で計算すると、PERは17倍に上がる。利益が急に減るときは、過去の利益で計算したPERが低く出る。

PBR 0.57倍も、ROEの低さに見合っている。前期のROEは5.6%で、今期の予想どおりなら純利益100億円を自己資本約2,970億円で割って3%台半ばまで下がる。この利益の水準で、株価が純資産を下回るのは不自然ではない。

信用取引の残高は、5月1日時点(全市場)で買い残20万5,600株、売り残1万6,000株で、買い残が売り残の12.9倍あった。買い残は1日の平均出来高の2〜3日分で、発行済み株式の0.5%ほどにとどまる。

理論株価の試算

5月15日に出た今期の会社予想(経常利益110億円、純利益100億円、EPS 223円、配当200円)をもとに、4つの方法で理論株価の範囲を出した。今の3,775円が高いのか安いのかを自分で確かめるためのもので、売買を勧めるものではない。1株当たり純資産(BPS)は決算短信の6,625円を使った。

手法 理論株価 前提
PER法 2,230〜2,680円 予想EPS 223円 × PER 10〜12倍。同業のオリコ13倍・クレディセゾン8倍の間をとった
PBR法 3,980〜4,640円 BPS 6,625円 × PBR 0.60〜0.70倍。同業のオリコ0.68倍・クレディセゾン0.81倍より低めにした
配当割引モデル 2,500〜2,860円 将来の配当を、投資家が求める利回りで割り引いて今の値打ちにする方法。配当200円 ÷ 期待収益率7〜8%(配当は増えも減りもしない前提)
配当利回り法 4,000〜5,000円 配当200円 ÷ 利回り4.0〜5.0%。同業の4%前後より高めの利回りを求めた
4手法の中央値 約3,500円 4つの範囲の真ん中の値を並べた中央値。今の3,775円の約7%下

範囲が2,200〜5,000円まで開いたのは、縮む利益で見るか、純資産と配当で見るかで結果が割れたからだ。利益で見る2つの方法(PER法・配当割引モデル)では今の3,775円は高く、純資産と配当で見る2つの方法では安い。

自分なら、利益で見る2つの方法を重く見て、真ん中は3,000〜3,500円と見る。今期の予想利益で17倍という株価は、同業のオリコ(13倍)やクレディセゾン(8倍)より高く、予想どおりに利益が減れば、PERが10〜12倍になる水準まで株価が下がる余地がある。

配当利回り法だけが今の株価より高い4,000〜5,000円を示しているが、これは配当200円が続くことが前提だ。配当性向が約90%まで上がる今期は、この配当が続くと信じられるかどうかで、理論株価が大きく変わる。

同業のオリコとクレディセゾンは増益

同業と比べると、ジャックスの減益が目立つ。5月の決算で、オリコ(オリエントコーポレーション)は前期の経常利益が17.0%増え、クレディセゾンも事業利益が8.9%増えた。どちらも今期は増益を見込んでいる。

指標 ジャックス(8584) オリコ(8585) クレディセゾン(8253)
時価総額 約1,700億円 約1,700億円 約8,000億円
主な株主 三菱UFJ銀行 みずほ銀行 独立系
PER(今期予想) 16.9倍 13.0倍 8.2倍
PBR 0.57倍 0.68倍 0.81倍
ROE(前期) 5.6% 5.3% 8.6%
配当利回り 5.3% 4.0% 3.7%
前期の利益 経常-21.4% 経常+17.0% 事業利益+8.9%
今期の予想 経常-45.7% 経常+3.8% 事業利益+7.8%

株価は5月15日の終値。PERは今期の会社予想のEPS、PBRは3月末の1株当たり純資産で計算した。クレディセゾンは国際会計基準で、経常利益の代わりに事業利益を載せた。

配当利回りでジャックスが飛び抜けているのは、株価の下落と利益の急減が同時に起きた結果だ。オリコは前の期に経常利益が23%減った後の回復で、ROEはジャックスとほぼ同じ5%台にとどまる。クレディセゾンは事業が広く、ROEでも一段上にいる。

同じように金利が上がっているなかで、同業の2社は増益で、ジャックスだけが大きく減益を見込んでいる。業界全体の逆風だけでは説明しきれず、ジャックス自身の問題が大きい。中期経営計画が掲げた「ALMの高度化」(金利の変化に合わせて、借り入れと貸し付けの期間や金利の組み合わせを整えること)が、まだ追いついていないように見える。

リスクと、利益が戻るかを見る点

主なリスク

  • 金利上昇の長期化 — 日銀が追加で利上げすれば、借り入れの利払いがさらに増える
  • 海外の追加損失 — インドネシアの立て直しが遅れれば、赤字が続く。マレーシアのCarsome Capital社への出資も、成果が出るまでには時間がかかる
  • 配当の持続性 — 会社は200円以上に努めるとしているが、DOE 3%で計算した額は約180円。利益の9割を配当に回す状態が長く続けば、いずれ見直しを迫られる
  • MUFGグループの再編 — 完全子会社化などの再編があるかどうかは、時期も条件も決まった話ではない

利益が戻るかどうかを見る点

利益が戻るかどうかは、次の3点にかかっていると見ている。

  • ALMの高度化 — 中期経営計画で掲げた「量から質への転換」を進め、もうけの薄い取り扱いを絞って、保証業務など利ざやの厚い分野に寄せられるか
  • インドネシアの立て直し — 受付を止めた四輪車・中古二輪車のローンの後、赤字をどこまで縮められるか
  • MUFGグループとの連携 — 三菱UFJ銀行の顧客の紹介や共同の商品が、取扱高の増加にどこまでつながるか

景気が悪くなりながら金利が上がる場合

ここまでは、物価と金利が緩やかに上がる前提で見てきた。物価と金利が上がりながら景気が悪くなる局面(スタグフレーション)になると、ジャックスはさらに苦しくなる。借りる金利は上がるのに貸し付けの金利はすぐには上げられず、景気の悪化で返済の遅れが増え、日銀は物価を抑えるために金利を下げにくい。配当利回り5%超で買うことを考える人ほど、この悪い場合の姿を一度見ておきたい。

項目 緩やかな逆風(会社予想の前提) スタグフレーション局面
国内クレジット取扱高 横ばい〜微減 大幅減(高額な買い物を控える)
延滞率・貸倒費用 緩やかに上昇 急上昇(実質所得減・失業増)
調達金利 年0.25〜0.5%ペースで上昇 高止まり〜さらに上昇
貸し付けの金利 契約済みの分は固定、新しい契約で少しずつ上げる 同左(需要が落ちるので、さらに上げにくい)
海外事業 緩やかな立て直し 通貨安・延滞率上昇で追加損失
経常利益 110億円(会社予想)前後 50〜80億円台に下振れ
配当 200円維持(配当性向約90%) DOE 3%の下限の約180円か、それ以下に減額
理論株価の目線 3,000〜3,500円 2,000〜2,500円

この局面では、PER法と配当割引モデルの理論株価が、利益の減少と減配で一段下がる。PBR法も、株主資本の目減りと、市場がつけるPBRの低下(0.5倍前後)で押し下げられ、配当利回り法は減配が決まった時点で前提が崩れる。4つを合わせた理論株価は、2,000〜2,500円程度になる。

MUFGグループの一員なので、資金繰りに困っても親会社の支援を受けやすい。ただ、それは会社がつぶれにくいという意味で、利益や配当が守られるという意味ではない。配当目当てで持つなら、この2つを分けて考えたい。

悪い場合に向かっているかを見分ける指標

スタグフレーションに向かっているかどうかは、次の指標で確かめる。

  • 日本の実質賃金 — プラスに戻れば消費は底堅く、クレジットの取扱高も保たれる。マイナスが続けば取扱高が減り始める
  • 日銀の金融政策 — 物価と景気の板挟みで利下げに動けなければ、金融費用の重さが長く続く。景気を優先して利下げすれば、ジャックスの利ざやには追い風になる
  • 4〜6月期(Q1)の決算の延滞率 — 国内のクレジットの延滞率が前の年より大きく悪化していたら、悪い場合の始まりと見る

逆の展開もある。日銀が少しずつ利上げを続けても、実質賃金が戻って景気が底堅ければ、取扱高が増えて金融費用の増加を吸収できる。インドネシアの立て直しが進めば、配当を保ちながら利益を戻す道も見えてくるだろう。同じ金利の上昇でも、かんぽ生命(7181)の記事で書いた生命保険会社のように、お金を運用する側で利息が増える業種もあり、稼ぎ方によって結果は正反対だ。

最初の確認ポイントは、4〜6月期(Q1)の決算だ。金融費用がどの速さで増えているか、上期の計画(経常利益60億円)に対してどこまで進んでいるかを見る。

出典: ジャックスIR情報、Yahoo!ファイナンス

※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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