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味の素とTOTOの半導体向け事業、4〜12月の利益率は54%と43%(続編)

味の素(2802)の電子材料は、2025年4〜12月に売上738億円、事業利益401億円を上げ、利益率は54%だった。TOTO(5332)のセラミック事業は同じ9か月で営業利益202億円を稼ぎ、全社の営業利益のちょうど半分を占めた。両社とも、全社の利益に占める半導体向けの事業の割合が、この1年でさらに高まった。

味の素とTOTOの半導体向け事業の売上と利益

技術が強いことは分かった。では、実際にいくら稼いでいるのか。2月21日の前編では、味の素のABF(半導体の基板に使う絶縁フィルム)とTOTOの静電チャック(製造装置の中でウエハーを固定する部品)が、代わりの利きにくい部材であることを書いた。今回は、両社の決算資料から半導体向けの事業の売上と利益を取り出して、期ごとに並べる。味の素は電子材料の区分の数字を決算ごとに出していて、TOTOはセラミック事業を1つのセグメントとして開示しているので、どちらも細かく追える。

味の素の電子材料は、売上の5%で事業利益の4分の1

味の素は事業を「調味料・食品」「冷凍食品」「ヘルスケア等」「その他」の4つに分けて開示している。ABFは「ヘルスケア等」の中の「ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)」という区分に入る。この区分にはABFのほか、接着剤や磁性フィルム、活性炭、離型紙も含まれるので、ABFだけの売上は分からない。それでも、決算短信と一緒に出る決算概要に、この区分の売上高と事業利益が毎回載っている。事業利益は、売上から原価と販売費・一般管理費を引いた、味の素が本業のもうけとして使う指標だ。

期売上高事業利益利益率
2022年3月期605億円289億円47.8%
2023年3月期701億円369億円52.6%
2024年3月期608億円276億円45.4%
2025年3月期765億円402億円52.5%
2025年4〜12月738億円401億円54.3%
2026年3月期の予想979億円525億円53.6%

ファンクショナルマテリアルズ(電子材料等)の区分の値。2026年3月期の予想は2月5日に修正した値。

2025年3月期は、全社の売上高1兆5,305億円の5.0%にすぎないこの区分が、402億円の事業利益を上げた。全社で1,593億円あった事業利益のうち、4分の1を稼いだ計算になる。電子材料の402億円は全社共通の費用を配る前の値なので、厳密な割合ではない。

伸び方は一本調子ではない。2024年3月期は売上が608億円、事業利益が276億円で、前の期よりそれぞれ13%と25%減った。売上の減り方より利益の減り方が大きく、利益率も45%まで下がっている。

2025年4〜12月の事業利益は401億円で、9か月で前の期の1年分とほぼ同じ額になる。会社は「AI、サーバー、ネットワークなど高性能基板向けABFの販売が好調」と説明し、2月5日に電子材料の通期予想を事業利益435億円から525億円に引き上げた。4〜12月の全社の事業利益は1,459億円で、前年同期より77億円増えた。電子材料の増益は92億円で、全社の増益を上回る。全社の通期予想は事業利益1,810億円で、これも2月5日に修正した値だ。

4〜12月に営業利益の半分を稼いだTOTOのセラミック事業

TOTOは事業を「日本住設」「海外住設」「新領域(セラミック事業)」に分けて開示している。セラミック事業の主な製品は、静電チャックと、製造装置の内側をプラズマから守るAD部材(セラミックの膜をつけた部品)だ。2025年3月期の決算短信で事業ごとの数字を並べると、利益率の差がはっきりする。

事業(2025年3月期)売上高営業利益利益率
日本住設4,813億円219億円4.5%
海外住設1,925億円90億円4.7%
セラミック事業503億円204億円40.6%
全社7,245億円485億円6.7%

売上高は外部の顧客への売上。全社には不動産賃貸などの「その他」を含み、全社の営業利益は事業ごとの利益から基礎研究などの全社費用29億円を差し引いた値。

セラミック事業は全社の売上高の6.9%で、営業利益の42.1%を稼いだ。前の期より売上は38.0%、営業利益は86.2%増えている。住宅設備の利益率が4〜5%なのに対し、セラミックは約4割ある。

2025年4〜12月は、セラミック事業の売上高が470億円(前年同期比37%増)、営業利益が202億円(42%増)で、全社の営業利益404億円のちょうど半分になった。ただ、全社の営業利益は前年同期より2.6%減っている。セラミックで60億円増えた分を、中国大陸の事業の赤字(53億円の営業損失)などが打ち消した。中国の事業の立て直しにかかる費用132億円を特別損失に計上したので、純利益は21.6%減の285億円だった。

第3四半期の決算説明資料によると、静電チャックには、新しい製造装置に載せる分と、使っている装置の部品を取り替える分の両方の需要がある。4〜12月は、メモリメーカーが設備投資を抑えたので新しい装置向けの売上の伸びが鈍り、工場の稼働が高いので取り替え向けが増えた。AD部材はAI向けの需要が堅調で、値上げも売上を押し上げた。

会社はセラミック事業の2026年3月期の売上を670億円、営業利益を270億円と計画している。全社の予想は売上高7,345億円、営業利益490億円で、10月末に当初の計画から引き下げた値だ。

利益率が高い味の素と、全社の利益に占める割合が大きいTOTO

2025年4〜12月の数字で2社を並べる。

2025年4〜12月味の素(電子材料)TOTO(セラミック)
売上高(前年同期比)738億円(+28%)470億円(+37%)
利益(前年同期比)401億円(+30%)202億円(+42%)
利益率54.3%43.1%
全社の利益に占める割合27%50%
2026年3月期の会社予想(利益)525億円270億円

味の素は事業利益、TOTOは営業利益。味の素の割合は全社共通の費用を配る前の値で計算した目安。

利益率は味の素の電子材料が11ポイント高い。一方で、全社の利益に占める割合はTOTOのほうがずっと大きい。味の素は調味料・食品だけで2025年3月期に1,139億円の事業利益があり、電子材料が1年落ち込んでも全社への影響は限られる。TOTOは住宅設備の利益が細っているので、セラミック事業の好不調がそのまま全社の利益に出る。

株価で見ると、半導体の市況に振られやすいのはTOTOのほうだと見ている。営業利益の半分が半導体の製造装置向けで、メモリメーカーが設備投資を絞れば、住宅設備では支えきれない。

増産の計画と会社の目標

味の素は、2030年までに約250億円を投じてABFの生産能力を5割増やす計画だ。第1弾として、子会社の味の素ファインテクノの群馬工場に、ABFの原料になる樹脂液(ワニス)の新工場を建てた。新工場は2025年3月に完成し、10月に本格稼働している。

TOTOは、2024〜2026年度の中期経営計画で、セラミック事業の開発と増産に290億円を投じる。ただし2025年度分は、当初の90億円から62億円に減らした。目標は、2023年度に365億円だったセラミック事業の売上を年20%ずつ伸ばし、2026年度に営業利益率40%にすることだ。

365億円を年20%ずつ伸ばすと、2026年度は約630億円になる。2026年3月期の計画(売上670億円、営業利益270億円)は、売上でも利益率でもこの水準を1年早く上回る。2025年2月には、田村信也取締役専務執行役員が「中期的に(現在の)数十倍の受注が見込める」と話している(ニュースイッチ、2025年2月12日)。全社の目標は2030年に売上1兆円以上、営業利益率12%以上で、2024年4月に9,000億円以上、10%以上から引き上げた。

利益が落ちるとしたら、きっかけは設備投資の減速

味の素の電子材料は、2024年3月期のように需要が落ちると、売上以上に利益が落ちる。今の好調を支えているのはAI向けのサーバーで、2月上旬の決算で、Alphabet、Amazon、Metaの3社は2026年の設備投資を合わせて前年より7割前後増やす見通しを示した。大手IT各社の投資がメモリの不足にどうつながっているかは、2月13日のメモリ価格の記事で書いた。この計画が引き下げられれば、ABFを使う基板の注文も減る。

TOTOのほうは、メモリメーカーの設備投資の影響がすでに4〜12月の数字に出ている。取り替えの需要は工場の稼働が高いうちは続くが、新しい装置向けが戻らなければ、セラミック事業の伸びは鈍る。

競争の面では、積水化学工業なども絶縁フィルムを手がけ、Intelは基板の芯をガラスにする技術を開発している。ただ、味の素の電子材料は4〜12月も28%の増収で、顧客を奪われた様子は数字に出ていない。静電チャックでも京セラや日本碍子、住友大阪セメントが競合するが、TOTOのセラミック事業は同じ期間に売上を37%伸ばした。

まとめ

両社の利益の柱になった半導体向けの事業

味の素の電子材料もTOTOのセラミック事業も、利益率が4〜5割の事業だ。2025年4〜12月には、この事業が味の素では全社で稼いだ事業利益の4分の1余りを、TOTOでは営業利益のちょうど半分を生んだ。TOTOのセラミック事業が全社の営業利益に占める割合は、2025年3月期の42%から、1年たたずに50%まで上がっている。

会社の計画どおりなら、どちらも2026年3月期の利益はさらに増える。ただ、味の素の電子材料は市況が悪い年に利益が25%減ったことがあり、TOTOのセラミック事業もメモリメーカーの設備投資に左右される。売上の伸びよりも、40〜50%台の利益率を保てるかを決算ごとに確かめたい。

チェックしたい指標
  • TOTOの4月末の本決算: セラミック事業が計画の売上670億円・営業利益270億円に届くか。新しい装置向けの静電チャックの売上が戻るか
  • 味の素の5月の本決算: 電子材料が予想の売上979億円・事業利益525億円に届くか。全社の事業利益が予想の1,810億円に届くか
  • Alphabet・Amazon・Metaの4月の決算で、2026年の設備投資の見通しが変わるか
  • メモリメーカーの設備投資の計画と、3D NAND(記憶素子を縦に積んだメモリ)向けの低温エッチング装置の出荷
  • 2月17日にPalliser Capitalが求めたセラミック事業の開示の拡充に、TOTOがどう答えるか

※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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