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TSMCの1-3月期は純利益58%増 設備投資の上積みは3nmの工場へ

  • TSMCの1-3月期は売上高35%増・純利益58%増で、どちらも四半期として過去最高だった。中東の戦争で化学品やガスの値上がりが心配されるなか、2026年の売上高の見通しを「30%超の伸び」(ドル建て)に引き上げ、設備投資は520億〜560億ドルの上限寄りにした
  • 日本の装置メーカーは、2026年3月期の会社予想で明暗が分かれている。検査装置のアドバンテストは営業利益99%増、前工程の東京エレクトロンとSCREENは1割台の減益を見込む。TSMCが投資を上積みする先は台南・アリゾナ・熊本の3nmの工場で、前工程の2社の受注はこれから増える余地がある
  • 熊本の第2工場は3nmで2028年に量産する予定。マスク氏の「テラファブ」は装置メーカーに見積もりを求めた段階で、確定した発注はまだない
TSMCの1-3月期は純利益58%増 設備投資の上積みは3nmの工場へ

4月16日の東京市場で、日経平均は前日比1,384円高の59,518円と最高値を更新した。午前から、米国とイランの停戦協議が進むとの期待で買われ、マスク氏の半導体工場構想「テラファブ」の報道では東京エレクトロンが急伸した。TSMCの1-3月期決算が伝わったのは午後の取引中で、売上高・純利益とも四半期として過去最高だった。2月末からの中東の戦争でAI向けの投資が鈍るという心配は、今回の数字には表れていない。

TSMCが設備投資を上積みする先は、前工程(ウエハーに回路をつくる工程)の工場で、日本の装置メーカーへの追い風は、検査装置のアドバンテストに先に届き、前工程の東京エレクトロンとSCREENにはこれから届く。

2024年末
熊本のJASM第1工場が量産を始める。22/28nmと12/16nmの半導体をつくる。
2026年2月5日
TSMCのC.C.ウェイ会長兼CEOが高市早苗首相に、熊本第2工場で3nmを採用すると伝える。
2026年2月28日
米国とイスラエルがイランを攻撃。ホルムズ海峡が事実上閉ざされ、原油や化学品の調達に不安が広がる。
2026年3月21日
マスク氏が米テキサス州オースティンで、テスラとスペースXが共同で進める半導体工場構想「テラファブ」を発表(米国時間)。
2026年3月31日
台湾の経済部(経済省)が、TSMCが熊本で3nmの半導体をつくる計画を許可。
2026年4月16日
午前にテラファブ側が東京エレクトロンなどに接触したとの報道。午後にTSMCが1-3月期決算を発表し、通年の売上高の見通しを引き上げた。日経平均は最高値を更新。
2028年(予定)
熊本第2工場で3nmの量産を始める。

売上高35%増・純利益58%増で、通年の見通しも引き上げ

TSMCが4月16日に発表した1-3月期の売上高は1兆1,341億NTドル(約5.7兆円)で前年同期より35.1%増え、純利益は5,724億NTドルで58.3%増えた。どちらも四半期として過去最高で、純利益はLSEGが集計した市場予想(5,433億NTドル)を上回った。売上高に占める粗利益の割合(粗利益率)は66.2%で、会社が1月に示した予想の範囲(63〜65%)を上回っている。

TSMC 2026年1-3月期の主な数字
売上高
1兆1,341億NTドル
前年同期比 +35.1%
純利益
5,724億NTドル
前年同期比 +58.3%
粗利益率
66.2%
会社予想は63〜65%

1月の決算では2026年の売上高を「ドル建てで30%近い伸び」と見込んでいたが、今回は「30%超」に引き上げた。設備投資は520億〜560億ドル(約8.3兆〜8.9兆円)の範囲を据え置いたうえで、上限寄りになるとした。2025年の実績は409億ドルで、上限の560億ドルまで使えば37%増えて過去最高になる。C.C.ウェイ会長兼CEOは決算説明会で、HPC(高性能計算)とAI向けの需要が強く、供給は「very tight(非常に逼迫している)」と話した。

2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃してホルムズ海峡が事実上閉ざされてから、原油だけでなく、半導体の工場で使う化学品やガスの調達も心配されていた(開戦後の相場の動きは3月16日の記事で追った)。

TSMCは、一部の化学品やガスは値上がりしそうで利益に響くかもしれないが、影響はまだ見積もれないと説明した。ヘリウムや水素は複数の地域の仕入れ先から買っていて安全在庫もあるので、目先の操業には支障がないという。そのうえで、AI関連の需要は「extremely robust(極めて強い)」と述べた。

同じ日の日経平均は、終値の最高値(2月27日の58,850円)を上回った。ただ、上げ幅の大半は午前のうちについていて、停戦協議への期待、前日の米国のハイテク株高、テラファブの報道が主な買い材料だった。TSMCの決算は、午後の取引中に上げ幅を保つ支えになった。

日本の装置メーカーは、検査が伸びて前工程は減益

日本の主な半導体製造装置メーカー4社の2026年3月期の会社予想を、4月16日時点で並べた。どの会社も期は3月に終わっていて、実績の発表は4月下旬からになる。

会社 主な装置 売上高(前期比) 営業利益(前期比) 予想の発表日
アドバンテスト
(6857)
半導体の検査装置(テスタ) 1兆700億円
(+37.2%)
4,540億円
(+99.0%)
1月28日
ディスコ
(6146)
ウエハーを切る・薄く削る装置 4,190億円
(+6.5%)
1,721億円
(+3.2%)
1月21日
東京エレクトロン
(8035)
前工程の成膜・塗布現像・エッチング装置など 2兆4,100億円
(-0.9%)
5,930億円
(-15.0%)
2月6日
SCREEN HD
(7735)
前工程の洗浄装置など 6,210億円
(-0.7%)
1,170億円
(-13.8%)
2025年10月31日(1月30日に据え置き)

アドバンテストは営業利益がほぼ倍になり、純利益の予想も3,285億円と前期の2倍を超える。前工程の東京エレクトロンとSCREENは、売上高はほぼ前期並みでも営業利益は1割台の減益を見込む。東京エレクトロンの純利益の予想(5,500億円)は前期より1.1%多い。ただ、2月6日には投資有価証券の売却益を特別利益に計上する見込みも発表していて、本業のもうけを示す営業利益は減る。

ディスコは通期では小幅な伸びにとどまるものの、4月6日に発表した1〜3月期の個別の出荷額は981億円と前年同期より28%増えていて、期の後半に勢いがついた。

アドバンテストはAI向けの検査、前工程の2社は顧客の投資の見直し

アドバンテストでは、GPUなどのAI向けの半導体を検査するテスタと、HBM(AI向けの高速メモリ)などを検査するテスタの売上が大きく伸びた。会社は、半導体の性能が上がって回路が複雑になるほど検査の手間が増え、テスタの需要が増えていると説明している。顧客はTSMCだけではなく、2024年度の有価証券報告書では最大の顧客のTSMCが売上の12.3%、次のサムスン電子が10.6%で、残りは検査を請け負う会社などに分かれている。

前工程の2社は、TSMC以外の顧客が投資を見直した影響を受けた。東京エレクトロンの河合利樹社長は2025年7月の決算説明会で、2026年1〜3月から増えると見ていた投資に「かなりブレーキがかかった」と話した。理由には、最先端の演算用の半導体で一部の投資が見直されたこと、中国で一世代前の製造技術への投資が減ったこと、データを保存するNANDメモリの投資が調整に入ったことを挙げていた。

SCREENも4〜12月の累計で売上高が7.5%減、営業利益が23.0%減った。半導体製造装置の売上は台湾向けが増えた一方、中国と米国向けが減っている。

TSMCが投資を上積みする先は3nmの前工程の工場

TSMCは1月、2026年の設備投資の7〜8割を先端プロセス、約1割を特殊プロセス、1〜2割を先端パッケージング(チップの組み立て)やマスクなどに充てると説明していた。4月の説明会では、上限寄りにする理由として3nmの生産能力の増強を挙げ、台南の新工場(2027年前半に量産)、米アリゾナの第2工場(2027年後半)、熊本の第2工場(2028年)をいずれも3nmでつくると述べた。

どれもウエハーに回路をつくる前工程の工場で、東京エレクトロンやSCREENの装置が入る。台南の新工場が2027年前半に量産を始めるなら、装置の発注と搬入は2026年中に進むはずで、前工程の2社の受注にはこの先の四半期に表れてくる。

株価は業績より先に動いている。東京エレクトロンの株価は、業績予想を下方修正した翌日の2025年8月1日に22,405円まで下げた後、4月16日には45,820円と約2倍になった。今期の営業利益は減益の予想でも、株価は受注の回復を先に取り込み始めている。

熊本の第2工場は3nmで、2028年に量産の予定

熊本県菊陽町のJASMはTSMCが中心の合弁会社で、出資比率はTSMCが86.5%、ソニーグループ(6758)の子会社のソニーセミコンダクタソリューションズが6.0%、デンソー(6902)が5.5%、トヨタ自動車(7203)が2.0%だ。トヨタは第2工場の建設を決めた2024年2月から出資している(ソニーセミコンダクタソリューションズの発表)。

nm(ナノメートル)は回路の細かさを示し、数字が小さいほど新しい技術になる。第1工場がつくる22/28nmと12/16nmの半導体は、3nmより数世代前の技術にあたる。

第2工場は、2024年2月の発表では2027年末までの稼働を予定していた。3nmへの切り替えは冒頭の時系列のとおりで、4月16日の説明会では量産を2028年の予定と説明している。国内ではラピダスも2027年に2nmの量産を目指していて、日本でも最先端に近い半導体をつくる工場が並び始める。

地元への波及は大きい。九州フィナンシャルグループは2024年9月、TSMCの2工場にソニーなどの工場の新設・増設も加えて、熊本県内で2022〜2031年の10年間に生まれる経済波及効果を11兆1,920億円と試算した(日本経済新聞)。JASMの2工場では、3,400人以上の技術職の雇用が生まれる計画だ。

材料では、半導体素材の記事で取り上げた信越化学工業(4063)のシリコンウエハーや東京応化工業(4186)のフォトレジストのように、工場で使う材料の需要が増える。熊本市南区にはルネサスエレクトロニクス(6723)の川尻工場もあり、技術者の採用で競う相手が増えるので、地元の企業には人件費の上昇が負担になる。

テラファブは装置メーカーに見積もりを求めた段階

マスク氏は3月21日(米国時間)、テスラとスペースXが共同で進める半導体工場の構想「テラファブ」を発表した。まず米テキサス州オースティンに先端技術の工場をつくり、車やロボット「オプティマス」向けのAIチップと、スペースXやxAI向けの宇宙で使うチップをつくるという。

4月16日のBloombergの報道によると、合弁のスタッフがアプライド・マテリアルズ、東京エレクトロン、ラムリサーチなどの装置メーカーに見積もりと納期を問い合わせた。関係者の話として、最初に月3,000枚を処理するパイロットライン(試験的な生産ライン)をつくり、2029年までにシリコンの製造を始める計画と伝えている。確定した発注はまだない。

マスク氏は、既存の半導体メーカーではテスラやスペースXが必要とする量をまかなえないと主張している。テスラは次の自動運転用のチップ「AI5」をTSMCとサムスン電子に、その次の「AI6」をサムスンの米テキサス州テイラー工場に任せていて、今は外部の工場に頼っている。

日本の装置メーカーにとっては新しい顧客の候補になるが、月3,000枚の試験ラインは量産工場に比べて小さく、2026年の業績にはほとんど関係しない。自分なら、装置の発注が確定するまでは、この話だけを理由に東京エレクトロンの株を買うことはしない。

この決算を受けて確かめたい2つの数字

① 上限寄りの設備投資が続く見込み

TSMCが560億ドル(約8.9兆円)に近い設備投資を続けられるかを、いちばん気にかけている。TSMCは説明会で、中東の情勢で景気の先行きが見えにくくなったので計画は慎重に立てると話している。半導体株は、需要の天井より先に設備投資の伸びが鈍ったところで下げ始めることが多い。7月中旬の4-6月期決算で、設備投資の見通しが上限寄りのままかをまず確かめる。

② 東京エレクトロンの受注が増えに転じる時期

東京エレクトロンの株価は受注の回復を先に取り込んでいるので、次は決算の数字で裏付けを取りたい。7月末に発表される4-6月期の決算で、受注高が前年同期を上回るかどうかを見る。上回れば、TSMCの3nmの工場への投資が前工程の装置メーカーの受注に届き始めたと判断できる。

まとめ

TSMCの投資の上積みは3nmへ、前工程の装置メーカーの受注はこれから

中東の戦争が続くなかでも、TSMCの1-3月期の数字にAI向けの需要の衰えは見えなかった。設備投資の上積みは3nmの前工程の工場に向かう。検査装置のメーカーと前工程の装置のメーカーで今は業績に差がついているが、その差は受注から縮まっていくと見ている。

7月中旬にはTSMCの4-6月期決算で設備投資の見通しを、7月末には東京エレクトロンの4-6月期の受注高を確かめる。熊本の第2工場は建設の進み具合、テラファブは装置の発注が確定するかを追う。

出典: TSMC「TSMC Reports First Quarter EPS of NT$22.08」(2026年4月16日)、Bloomberg「マスク氏の半導体構想テラファブ始動、東京エレクなどに接触-関係者」(2026年4月16日)

※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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