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楽天銀行(5838) 再編協議の再開から2日で20%下落 — 上場の行方と金利上昇の損得

楽天銀行(5838)の株価は、楽天グループがフィンテック事業の再編協議を再開すると発表した後の2日間で、7,958円から6,363円へ約20%下げた。再編で楽天カードを傘下に入れると、金利上昇で利益が増える銀行と、借入のコストが増えるカード会社を一緒に抱える株に変わる。株価の目安は再編の条件しだいで、楽天銀行に有利なら7,500〜8,500円、楽天グループ主導なら4,500〜5,500円と試算しており、株式交換の比率とみずほの持分の扱いが分かれ目になると見ている。

楽天銀行(5838) 再編後の上場の行方と金利上昇の影響

2日で2割下げた株を、このまま持ち続けていいのか。楽天銀行(5838)の株価は2026年2月26日に前日比13.57%下げ、翌27日も7.49%下げて、2日で7,958円から6,363円へ約20%値下がりした。前回の記事では、急落の背景として、楽天グループによるフィンテック事業の再編協議の再開と、市場が気にしている3つのリスクを整理した。今回は、再編後に上場がどうなるか、楽天カードと楽天証券のどこが重荷になるか、金利上昇が楽天銀行にとって得か損かを確かめる。

2日で20%下落、再編協議の再開が発端

2/25(水)引け後
楽天グループがフィンテック事業再編の協議再開を発表。楽天銀行傘下に楽天カード・楽天証券HDを集約する方針
2/26(木)
楽天銀行株が前日比-13.57%(-1,080円)の急落。出来高682万株。約1ヶ月ぶり安値を更新
2/27(金)
続落。前日比-7.49%(-515円)で6,363円。出来高1,133万株と前日を大幅に上回り、さらに売りが加速

前回の記事では、市場の懸念を「成長制約リスク」「財務負担増」「みずほとの持分問題」の3つに分けた。このうち財務の負担とみずほの持分は、この記事の後半で数字を使って確かめる。

続く上場と、変わる株の中身

株主として一番気になるのは、再編後にこの株がどうなるかだ。楽天グループは上場を続けると明記しているが、親会社と子会社がともに上場している形(親子上場)を解消した過去の例を見ると、中長期ではほかの展開もありうる。

上場は続く(楽天グループの方針)

楽天グループは2026年2月25日の発表で「本再編の実施後においても、楽天銀行の株式は、引き続き東京証券取引所プライム市場に上場されることを想定しております」と明記している。この場合、楽天銀行は楽天カードと楽天証券HDを子会社に持つ会社になる。楽天銀行の株はこれまでどおり売買できるが、中身は銀行だけの会社から、銀行・カード・証券をまとめた金融グループに変わる。

出典: 楽天グループ フィンテック事業再編に向けた協議の再開始に関するお知らせ(2026年2月25日)

数年後に、TOBで完全子会社になる可能性

親子上場を解消する例では、いったん上場を続けると言っても、数年後に親会社がTOB(株式の公開買い付け)で残りの株を買い取り、完全子会社にして上場をやめるケースが少なくない。NTTが2020年にNTTドコモを完全子会社にしたのが代表例だ。楽天グループがモバイル事業の立て直しに成功し、フィンテック事業の利益をすべて取り込みたいと考えれば、楽天銀行の株主にTOBをかける可能性もある。

株式交換で変わる今の株の中身

楽天カードと楽天証券HDを楽天銀行の子会社にするとき、株式交換(子会社になる会社の株主に、親会社の新しい株を渡す方法)が使われる可能性がある。新しい株が増えるので、1株あたりの価値が薄まる(希薄化)おそれがある。交換の比率しだいでは、今持っている株が、銀行だけの株から、カードと証券の負担も含んだ金融グループの株に変わってしまう。市場はこの点をいちばん嫌っている。

少数株主を守る仕組みはある。楽天銀行は、楽天グループから独立した特別委員会を設け、株式交換の比率が少数株主(楽天グループ以外の株主)に不利でないかを確かめる体制を整えている。ただし、親会社と少数株主の利害がぶつかるおそれが消えるわけではなく、主導権はあくまで楽天グループが握っている。

重荷になるのは、楽天カードの借入コスト

再編では、楽天カードと楽天証券HDの2社が楽天銀行の傘下に入る。3社の業績と、金利上昇の影響の向きを並べると次のようになる。

3社の業績と金利上昇の影響

指標 楽天銀行 楽天カード 楽天証券
利益 純利益713億円(予想) 営業利益623億円 過去最高
増減率 +40% +2.7% 大幅増
顧客基盤 1,763万口座 取扱高26.5兆円 1,326万口座
金利感応度 プラス(大) マイナス(大) まちまち

楽天銀行は2026年3月期の純利益の会社予想(1株利益408円に相当)。楽天カードと楽天証券は楽天グループの2025年度決算による。出典: 楽天グループ 2025年度通期決算ハイライト(2026年2月12日)、Yahoo!ファイナンス 楽天銀行 決算情報

楽天カード:金利が上がるほど増える借入のコスト

3社のうち、金利上昇でいちばん損をするのは楽天カードだ。カード会社は、客がカードで買い物をした代金を、先にお店に払っておく。お店への支払いは当日から数日後だが、客からの回収は翌月以降になる。この間を埋めるため、カード会社は短期の借入や社債で、いつも多額の資金を借りている。楽天カードのショッピング取扱高は年26.5兆円あり、借りる額も大きい。

金利が上がると、この借入のコストがそのまま増える。楽天銀行の2026年3月期の第3四半期決算(4〜12月)では、資金の調達費用が前年同期より160億円多い271億円になった。主な理由は預金金利の引き上げだ。楽天カードが傘下に入れば、カード事業の借入コストの増加も、楽天銀行の連結決算に加わる。

楽天カードの借入コストが増える仕組み

  • 短期の借入金利の上昇:日銀の利上げに合わせて、CP(企業が短期のお金を借りるために出す証券)や銀行からの借入の金利が上がる
  • 社債の金利の上昇:2025年8月に楽天グループが出した社債の金利は年2.336%で、3年前の同じ条件より約1ポイント高い
  • 立て替える額の増加:ショッピング取扱高26.5兆円は前年より10.3%多く、借りる額そのものが増えている
  • リボ払いの手数料率の引き上げで一部は取り返す:ただし客の負担が増えるので、利用が減るおそれもある

楽天グループが再編を進めたい理由の一つが、この借入コストだ。楽天カードが楽天銀行の子会社になれば、楽天銀行の13.2兆円の預金を使って、安く資金を回せるようになる。グループ全体では効率が上がるが、楽天銀行の株主から見れば、自分たちの安い資金が楽天カードの借入の穴埋めに使われるとも受け取れる。

楽天証券は、みずほが持つ49%の扱いが焦点

楽天証券HDの業績は好調で(過去最高の収益、口座数1,326万)、足を引っ張る要素は少ない。問題は、みずほ証券が持つ49%の株をどうするかだ。

楽天銀行が楽天証券HDを100%持つには、みずほ証券から49%を買い取る必要がある。楽天証券の企業価値を仮に3,000〜4,000億円とすると、49%は1,470〜1,960億円になる。楽天銀行の純資産は約3,500億円なので、かなり重い負担だ。買い取りのお金を増資・社債・借入のどれで集めるかによっては、今の株主の持ち分がさらに薄まる可能性もある。

今は楽天銀行の利益を押し上げている金利上昇

楽天グループが再編を再び決めたいちばんの背景は、日本の金利が上がり始めたことだ。金利上昇が楽天銀行の商売にとって得か損かを、事業ごとに見る。

437億円増えた貸出と運用の収益

楽天銀行の商売の中心は、預金で集めたお金を貸出や国債の運用に回して、利ざやを稼ぐことだ。利ざやは、貸すときの金利と、預金に払う金利の差をいう。金利が上がると貸出金利や国債の利回りが上がり、この利ざやが広がる。

実際、2026年3月期の4〜12月の資金運用収益は1,281億円と、前年同期より437億円(51.8%)増えた。住宅ローンの変動金利も、2026年2月に基準金利を1.907%に上げるなど、貸出の利回りは上がっている。

0.10%から0.38%へ上がった預金金利

その分、預金に払う金利も上がっている。楽天銀行は、楽天証券と口座をつなぐマネーブリッジの利用者向けの普通預金金利を、2026年2月から年0.38%(1,000万円以下の部分)に上げた。ゼロ金利の時期は0.10%だったので、預金に払う金利は約4倍になった。

預金残高13.2兆円のすべてで金利が0.28ポイント上がったとすると、年間の追加コストは単純計算で約370億円になる。資金運用収益は4〜12月の9か月だけで437億円増えていて、これを上回るので、今のところは金利上昇の得のほうが大きい。ただ、さらに利上げが進むと、各行が預金金利を競って上げ、この差が縮むおそれがある。

出典: 楽天銀行 マネーブリッジ普通預金の優遇金利改定のお知らせ(2025年12月25日)、日本経済新聞「楽天銀行、2月から変動型住宅ローン金利上げ」(2026年1月)

住宅ローンは、金利の引き上げで新しい借り手が減るおそれ

楽天銀行の住宅ローンの変動金利は1.147%からで、メガバンクやネット銀行の大手(0.6〜0.7%前後)より、もともと高めだ。金利が上がる局面では、基準金利の引き上げ(2026年2月に1.907%)で、借り手の負担がさらに増える。1億円を35年で返す場合、金利が0.11ポイント上がると、返済の総額は約230万円増える。

ネット銀行どうしの住宅ローンの金利競争は激しく、楽天銀行が金利の上昇分を借り手に負担させれば、新しい借り手が減るおそれがある。ただ、楽天銀行は事務手数料を33万円の定額にしていて(他行は借入額の2.2%が主流)、手数料まで含めた総額では安くできるので、金利以外の強みは保っている。

事業ごとの金利上昇の損得

再編した後は、銀行・カード・証券のそれぞれが金利上昇で得る分と失う分が、楽天銀行の連結決算にまとめて入る。

事業 金利上昇のプラス面 金利上昇のマイナス面
銀行 貸出・国債の運用利回りの上昇(4〜12月で+437億円) 預金金利の引き上げ(調達費用+160億円)、住宅ローンの新しい借り手の減少
カード リボ払いの手数料率の引き上げで収入が増える 立て替え分を借りるコストの急増、社債の金利の上昇(2.3%超)、CPの金利の上昇
証券 信用取引の金利の引き上げで収入が増える 保有する債券の評価損、相場が悪くなったときの取引量の減少

今は銀行が金利上昇で得る利益がカードの損を上回っているが、さらに利上げが進めば、カードの借入コストの増加が連結の利益を押し下げる可能性が高まる。

再編の条件しだいで4,500円から8,500円まで開く株価の目安

2月27日時点の楽天銀行の主な指標は次のとおりだ。

指標 数値(2026年2月27日時点)
株価 6,363円
PBR(株価純資産倍率) 3.14倍(BPS 2,025円)
PER(株価収益率) 15.6倍(EPS予想 408円)
アナリスト平均目標株価 約8,300円(レーティング平均4.0=やや強気)
理論株価(PBR基準) 7,657円(PBR 3.78倍相当)

出典: IFIS株予報 楽天銀行 レーティング・目標株価、Yahoo!ファイナンス 楽天銀行

再編の結果を3通りに分けて、株価の目安を試算した。自分が判断するための目安で、売買を勧めるものではない。

楽天銀行に有利な条件で再編する場合:7,500〜8,500円

みずほの持分を、楽天銀行に大きな負担をかけずに処理でき、株式交換の比率も今の株主の持ち分をあまり薄めない場合だ。楽天カードと楽天証券の利益が連結に加わり、1株あたり利益(EPS)は増える。PERが今の15.6倍のままなら、EPSが増えた分だけ株価は上がる。アナリストの平均目標株価8,300円も、この場合に近い。

楽天グループ主導で再編する場合:4,500〜5,500円

楽天グループの財務の立て直しを優先した再編になる場合だ。楽天銀行の安い資金がカード事業の借入に多く回り、連結のROE(自己資本利益率)が下がる。みずほの持分を買い取るために増資(新しい株の発行)をすれば、1株あたりの価値も薄まる。PBRは今の3.14倍から2.2〜2.7倍程度に下がる可能性があり、1株あたり純資産(BPS)2,025円に2.5倍をかけると約5,060円になる。

再編がまた中止になる場合:7,000〜8,000円

みずほとの交渉がまとまらず、再編がまた中止になる場合だ。2024年9月に一度中止しているので、同じことが起きてもおかしくない。楽天銀行は再び銀行だけの株として見られ、純利益40%増の予想という好業績がそのまま株価に表れる。再編をめぐる売り材料が消えるので、株価はPBR3.5〜4.0倍(7,000〜8,000円)に戻るとみている。

まとめ — 確かめるのは再編の条件と日銀の利上げ

2月28日時点の見立て

楽天銀行の株価は2日で約20%下げ、6,363円になった。再編後も上場を続けるのが公式の方針だが、将来、完全子会社になって上場をやめる可能性もゼロではない。金利が上がると銀行本体の稼ぎは増えるが、楽天カードを傘下に抱えると、カードの借入コストの増加も同じ連結決算に乗ってくる。

自分は次の3点を順に確かめていく。

  • 株式交換の比率:楽天カードと楽天証券HDを、どんな条件で楽天銀行の傘下に入れるか。今の株主の持ち分がどれだけ薄まるかが最大の焦点
  • みずほの持分の扱い:楽天証券HDの49%(推定1,500〜2,000億円規模)を買い取るか、買い取るならお金をどう集めるか
  • 日銀の追加利上げ:利上げは銀行の運用収益を押し上げる一方で、カード事業の借入コストの増加も速め、再編後の連結利益を圧迫する

※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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