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スズキ(7269) 4〜12月の減益でも22%上げた純利益予想 売上の4割はインド

スズキ(7269)のインド事業とEV参入を軸にした成長戦略を整理

2月5日の取引時間中、スズキ(7269)は4〜12月の決算を発表し、同時に3月期の純利益予想を3,200億円から3,900億円へ22%引き上げた。4〜12月の営業利益は前の年より10.6%少なく、この時期としては5期ぶりの減益だった。前期に売上・利益とも過去最高を出した後で、今期は円に対するインドルピーの下落と原材料の値上がりが重なった。販売はインドでも日本でも伸びており、株価は発表の翌日に4%上がった。

2024年11月
初の量産EV「eビターラ(eVITARA)」をイタリアのミラノで初公開。
2025年3月期(前期)
売上収益5兆8,251億円・純利益4,160億円と、いずれも過去最高を更新。
2025年8月
インドのグジャラート工場でeビターラの量産を始め、欧州への出荷も始めた。
2025年9月22日
インドで物品サービス税(GST)が改定され、小型車の値段が下がった。10〜12月のインドの四輪の販売は前の年より22%増えた。
2026年1月16日
eビターラを日本で発売。
2026年2月5日
4〜12月の決算を発表し、通期予想を上方修正。配当の予想も1円上げた。

4〜12月は5期ぶりの減益、減った分の大半は為替と原材料

前期(2025年3月期)は、売上収益が前の期より8.7%、営業利益が30.2%(6,428億円)、純利益が31.2%増え、いずれも過去最高だった。今期の数字は、この高い水準と比べられる。

項目 4〜12月の実績 前年同期比
売上収益 4兆5,166億円 +5.4%
営業利益 4,291億円 ▲10.6%
税引前利益 5,208億円 ▲5.0%
純利益 3,063億円 ▲1.7%

スズキは国際会計基準(IFRS)で決算を出しており、経常利益の代わりに税引前利益を載せた。

売上は5.4%増えたが、営業利益は前の年より506億円減った。会社の説明では、為替で180億円(インドルピーが円に対して6%下がって221億円減り、ユーロ高で92億円増えるなど)、原材料(貴金属・鉄・アルミなど)の値上がりで437億円、合わせて617億円が外から来た減益の要因だった。

それ以外の要因を足すと、111億円の増益になる。台数の増加(+217億円)、売れる車種の変化(+297億円)、原価の引き下げ(+291億円)が、人件費を中心とする固定費(▲364億円)、研究開発費(▲173億円)、減価償却費(▲157億円)の増加を上回った。4〜12月の四輪の販売台数は、インドで3.8%、日本で2.2%増えた。日本では軽自動車の届出台数のシェアで首位を保ち(4〜12月は33.7%)、登録車も3割増えている。為替と原材料を除けば利益は増えており、稼ぐ力は落ちていない。

通期予想の上方修正と増配

2026年3月期 通期予想(2026年2月5日 上方修正後)
売上収益
6兆2,000億円
前回予想比 +1.6%
営業利益
5,700億円
前回予想比 +14.0%
純利益
3,900億円
前回予想比 +21.9%
年間配当
46円/株
前回予想45円(前期41円)

スズキは5月に出した通期予想を、ここで初めて変えた。純利益は3,200億円から3,900億円へ21.9%上がり、前期と比べた減益の幅は23.1%から6.3%に縮んだ。会社は為替の前提を見直し、固定費を抑える取り組みも織り込んだと説明している。年間配当の予想も45円から46円に1円上げ、前期の41円からは5円の増配になる。減益の見通しのまま予想と配当を上げており、会社は1〜3月の利益に手応えを持っているように見える。

売上の4割はインド、乗用車のシェアは約4割

スズキの柱は、子会社マルチ・スズキを通じたインドの事業だ。2025年3月期のインドの売上収益は2兆4,476億円で、全体の42%を占める。インド国内での四輪の販売(卸売)は179.5万台で、全社の55.4%にあたる。インドの乗用車市場でのシェアは2024年度に40.6%だった。日本の自動車メーカーで、ここまで一国に売上が集まっている会社は珍しい。

スズキのインド事業 主要指標(2025年3月期)
インド売上収益
2兆4,476億円
全体の42%
インド販売台数
179.5万台
四輪全体の55.4%(卸売)
インド乗用車シェア
40.6%
2024年度、首位
2030年度の販売目標
254万台
中期経営計画

2025年(暦年)の乗用車のシェアは39.9%で、4割をわずかに割った。ただ、9月22日にGSTが改定されて小型車の値段が下がると販売が伸び、10〜12月のシェアは40.7%に戻っている。会社は、値段が下がって二輪車から乗り換える人や、地方でローンを組んで買う人が増えたと説明している。

40年かけて築いた販売網と部品の調達網

スズキは1983年にインドで生産と販売を始め、40年以上トップのシェアを保ってきた。後から来たメーカーには、すぐにはまねできない強みがある。

  • 部品の多くを現地で調達している — 値段にうるさいインドの客に、手頃な値段で売れる。この部品の取引先の網は、ほかの外資系メーカーには簡単に作れない
  • 小型車を作ってきた技術 — 日本の軽自動車・小型車で積み上げた技術が、安い小型車が中心のインドの需要に合う。アルト、ワゴンR、スイフトなどで幅広い所得層に売っている
  • 販売と修理の網 — 販売店と部品の供給網がインド全土にあり、農村部まで届く
  • 長く売ってきた実績 — 「マルチ=クルマ」と呼ばれるほどブランドが定着している

まだ大きくなるインドの市場

インドは2022年に日本を抜いて、中国、米国に次ぐ世界3位の自動車市場になった。人口は14億人を超えるのに、1,000人あたりの乗用車の保有台数は約30台で、日本(約500台)の17分の1ほどしかない。これから初めて車を買う人が大勢いる。インド政府も製造業を育てる政策(Make in India)で自動車産業を重く見ている。スズキはインドの乗用車シェア50%をめざし、年400万台の生産体制を、市場の状況を見ながら整える計画だ。

2025年に量産を始めたEVと、地域ごとに中身が違う電動化

スズキ初の量産EV(電気だけで走る車)「eビターラ」は、2024年11月にミラノで初めて公開され、2025年8月にインドのグジャラート工場で量産が始まり、欧州にも出荷された。日本では2026年1月16日に発売した。価格は399.3万円からで、国のCEV補助金(eビターラは127万円)を使えば約272万円から買える。

eビターラ 主要スペック
バッテリー容量
49 / 61kWh
X / Zグレード
航続距離(WLTC)
433〜520km
国際基準での1充電走行距離
価格(税込)
399.3万円〜
補助金を引いて約272万円〜
プラットフォーム
HEARTECT-e
EV専用に新開発した車の土台

eビターラは、EV専用に新しく開発した車の骨格(プラットフォーム)「HEARTECT-e」を使う。ただ、テスラやBYD、現代自動車と比べると、量産EVを出す時期は遅かった。

2030年度に売上8兆円をめざす中期経営計画

スズキは2025年2月20日に、2030年度までの中期経営計画を発表した。

項目 2025年3月期(実績) 2030年度(目標) 成長率
売上収益 5兆8,251億円 8兆円 +37%
営業利益 6,428億円 8,000億円 +24%
営業利益率 11.0% 10.0% —
ROE 14.6% 13.0% —

売上を37%伸ばす一方で、営業利益率とROE(自己資本利益率=株主が出したお金で年にどれだけ利益を上げたか)の目標は今より少し低い。立ち上げたばかりで利益率の低いEVや新しい工場への投資が増えるためで、規模を取りにいく計画だと読める。

地域ごとに違う電動化の目標

中期経営計画では、2030年度に売る車の動力の比率を地域ごとに決めている。

地域 EVのモデル数 EV HEV そのほか
日本(乗用車) 6 20% 80% —
インド 4 15% 25% 天然ガス・バイオガス35%、エタノール混合燃料25%
欧州 4 45% 55% —

日本はEV 20%とHEV(エンジンとモーターを併用するハイブリッド車)80%で、売る車をすべて電動にする。欧州はEVが45%になる。インドはEVが15%、HEVが25%で、残りの6割は天然ガスや、エタノールを混ぜたガソリンで走る車だ。全部の車を一気にEVへ切り替えるのではなく、充電の設備や燃料の事情に合わせて地域ごとに中身を変える計画で、個人的には無理のない設計だと考えている。

トヨタより低いPER11倍台

スズキ(7269) 株価指標(2026年2月20日の終値で計算)
株価
2,294円
東証プライム上場
PER(予想)
11.3倍
修正後の予想1株利益202.15円
PBR
1.34倍
12月末の1株当たり持分 約1,712円
配当利回り(予想)
約2.0%
年間46円/株

2月20日の終値2,294円で計算すると、修正後の予想の1株利益(202.15円)に対するPER(株価が1株利益の何倍か)は11.3倍になる。トヨタ自動車は同じ日の終値でPER 13.2倍で、スズキのほうが低い。インドの成長への期待が株価に上乗せされているとは言いにくい水準だ。PBR(株価が1株純資産の何倍か)は1.34倍で、前期のROE 14.6%の収益力に照らせば、高すぎも安すぎもしない。

配当利回りは約2.0%。今期も41円から46円に増配し、配当性向(利益のうち配当に回す割合)は23%ほどと低いので、利益が伸びれば配当を増やす余地は大きい。

気になるのはインドへの集中と為替

リスク要因

  • インドへの集中 — 売上と四輪の販売の半分前後をインドに頼る。インドの景気や規制が変われば、その影響を直接受ける
  • 為替 — インドルピー、ユーロ、米ドルの動きで利益が変わる。4〜12月はルピーの下落だけで営業利益が221億円減った(為替全体では180億円の減益)
  • インドでの競争 — マヒンドラなど地元のメーカーがSUVでシェアを伸ばしている。EVでは中国系のJSW MGの車も売れている
  • EVの出遅れ — 量産EVを出したのはテスラ、BYD、現代自動車より遅い。インドでEVが急に広がれば、競争の条件が変わる
  • 原材料の値上がり — 4〜12月は貴金属・鉄・アルミなどの値上がりで437億円の減益要因になった。販売価格にどこまで上乗せできるかで利益率が変わる

一方で、インドの人口と所得が増えれば、初めて車を買う人は増え続ける。トヨタとは資本提携を結んでハイブリッドなどの技術を共有しており、開発の費用を抑えられる。インドの新工場(カルコダ、グジャラート)は、欧州などへの輸出の拠点にもなる。

決算ごとに確かめるインドの月次の販売とルピー

スズキの株を持つかどうかは、インドという1つの市場をどう見るかでほぼ決まる。インドの成長を信じられるなら、それを最も素直に取り込める会社で、PER 11倍台は高くない。逆にインドの景気が落ちたり、ルピー安が進んだりすれば、強みがそのまま弱みになる。十数年いろいろな銘柄を見てきて、売上が一国に集中している会社は、強いときはいちばん強く、崩れるときもいちばん速いと感じてきた。自分がこの株を持つなら、決算ごとにインドの月次の販売台数とルピーの対円レートを確かめ、EVの投入が計画どおり進んでいるかを見ていく。インドの成長を数年単位で取りにいく株だと考えている。

※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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