ソフトバンクグループの2025年4〜12月の純利益3兆1,726億円は過去最高だが、約2.8兆円はOpenAI投資の含み益だ。現金は入っておらず、法人税の支払いも売るまで生じない。発表翌日の2月13日に株価は8.9%安の4,390円まで下げ、発表前の水準を割った。同じOpenAIに投資するMicrosoftも決算後に17%下げており、日米とも市場が見ているのは、利益の額よりAI投資がいつ現金に変わるかになっている。
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「純利益5倍で過去最高」の見出しが出た翌日、株価は8.9%下げた。この決算をどう読めばいいのか。ソフトバンクグループが2月12日の引け後に発表した第3四半期決算は、純利益3兆1,726億円と前年同期の5倍だった。ただし3.1兆円のうち約2.8兆円はOpenAI関連の評価益で、株を売って得た現金ではない。この利益は本物なのか、含み益に税金はかかるのか、同じOpenAIに投資する米国のMicrosoftはなぜ売られているのか。順に確かめる。
純利益3兆1,726億円の源は投資損益4兆2,203億円
2026年3月期の第3四半期までの累計(2025年4〜12月)の連結業績は次のとおり。
| 項目 | 4〜12月の実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5兆7,192億円 | +7.9% |
| 売上総利益 | 2兆9,851億円 | +7.2% |
| 投資損益(合計) | 4兆2,203億円 | 約1.9倍 |
| 税引前利益 | 4兆1,692億円 | 約3.3倍 |
| 純利益 | 3兆1,726億円 | 約5倍 |
SBGの損益計算書には営業利益という科目がない。売上総利益2兆9,851億円から販管費などを引いた本業の部分より、投資損益の4兆2,203億円が利益のほとんどを作っていて、普通の事業会社ではまず見ない形だ。SVF事業(ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどの投資事業)の投資利益は3兆9,112億円と、前年同期の2,576億円から15倍になった。OpenAI関連の投資利益は2兆7,965億円で、SVF事業に2兆5,315億円、持株会社の投資事業に2,649億円が計上されている。
2.8兆円の内訳:持分の評価益とフォワード契約の評価益
OpenAI関連の2兆7,965億円は、第2四半期までの2兆1,567億円に10〜12月期の6,397億円を足した額だ。10〜12月期だけを見ると、7〜9月期までの勢いからは減速している。中身は、持っている持分そのものの値上がりと、持分を買う契約の値上がりに分かれる。
1つ目は、SBGが持つOpenAIの持分(将来株式に変わる権利と、従業員から買った持分)の時価が上がった分で、第2四半期(2025年9月末)時点で9,805億円を計上した。OpenAIの企業価値は2024年9月の約1,500億ドルから、2025年10月の従業員持分の売り出しでは約5,000億ドルと3.3倍になった。SBGの持分の時価もその分だけ増えた。株を売ったわけではないので、これは含み益になる。
2つ目は、あらかじめ決めた値段で持分を買う契約(フォワード契約)の時価が上がった分で、第2四半期時点で1兆1,762億円を計上した。これも市場での売買は伴わない。この契約は2025年12月26日に実行し、120億ドルで評価していた契約は345億ドル分の優先株式に変わった。12月末のOpenAI投資はすべて株式(帳簿価額8兆5,217億円、544億ドル)で、累計の投資利益は198億ドルになる。
どちらも現金にするには、OpenAIの上場か、既存の株主どうしで持分を売り買いする二次取引が要る。上場の時期は決まっていない。
会計上の利益と税務上の所得のずれ
SBGはIFRS(国際会計基準)を採用し、OpenAIへの投資は、公正価値で測って変動を損益に入れる区分(FVTPL)にしている。OpenAIの評価額が四半期ごとに変われば、そのまま連結の損益に出る。
| 項目 | 会計上(IFRS) | 税務上(日本の法人税法) |
|---|---|---|
| 未実現の評価益 | 利益として計上 | 原則として課税されない |
| 課税の時期 | 毎四半期(繰延税金として計上) | 売却して利益が確定した時点 |
| 評価損が出たとき | 損失として計上 | 原則として損金にならない |
日本の法人税法は、利益が確定してから課税する実現主義を原則にしていて、未実現の評価益には課税しない。課税所得になるのは、持分を売って利益が確定した時点だ。会計上は、将来売ったときに払う税金の見積もりを繰延税金負債として計上するため、損益計算書には税金の費用が載る。ただ現金の支払いは売却時まで発生せず、手元の資金繰りには影響がない。
4〜12月期の法人所得税4,357億円にも、投資有価証券の評価益にかかる分が含まれていると会社は説明している。逆に評価額が下がれば、会計上は損失になるが、税務上の損金にはならず、税金の還付も生じない。OpenAI株を持っているのは英国で運営するファンド(SVF2)なので、日本の法人税の原則がそのまま当てはまるかは、短信からは分からない。
2029年まで現金の流出が続くOpenAI本体
利益の源になっているOpenAI自身は、現金が出ていく局面にある。OpenAIのCFOは2026年1月18日のブログで、2025年12月時点の年換算の売上(ARR)が200億ドルを超えたと示した。計算能力も0.6ギガワットから1.9ギガワットに増えたとしているが、損失の額は示していない。
損失の見通しはThe Informationが2025年9月に報じた社内予測によるもので、2026年の現金の流出は170億ドル超とされる。2029年までの累計では1,150億ドルに達し、流出のピークは2028年の450億ドル、現金収支が黒字になるのは2030年だ。現金の出口は、AIモデルの学習とデータセンターの建設・運営、それにStargate構想(OpenAIとSBGが2025年1月に発表した、4年で5,000億ドルのデータセンター計画)への投資になる。
利用者が増えるほどGPUの計算資源が要り、効率の改善が利用者の増加に追いつかないので、成功するほど現金が出ていく。各社がGPUをどれだけ奪い合っているかは、NVIDIAの余剰GPUの貸し出しを扱った記事で整理した。黒字化は、AI市場の成長と、Google Gemini・Anthropic Claude・Meta Llamaとの競争の行方で決まる。
発表翌日は8.9%安、Microsoftも決算後に17%安
決算の発表は2月12日の引け後で、その夜のPTS(夜間取引)では5,100円台まで買われた。ところが純利益は市場予想を下回っていた。翌13日は4,747円で寄り付いた後に売りが続き、終値は前日比427円安(8.86%安)の4,390円と、発表前の4,817円を下回った。
この日はTOPIXも1.65%下げ、前日の米国でハイテク株が売られた流れを受けたが、SBGの下げ幅はそれより大きい。2月上旬からの4連騰で2月5日の3,912円から23%上げていたぶんの利益確定と、「評価益が主因の帳簿上の利益」という受け止めが重なった。
同じOpenAIに投資するMicrosoftの株価も、1月28日の決算の後に下げている。発表直後の時間外取引で7%安、翌29日の通常取引で10%安となり、2月13日の401ドルは決算前の482ドルから17%低い。10〜12月期の設備投資は375億ドルと前年同期から66%増え、クラウドの受注残6,250億ドルのうち約45%がOpenAI向けだと分かった。2月9日には1週間で2度目の投資判断の引き下げが出た。
米国市場が気にしているのは、AI投資のROI(投じた資金に対してどれだけ利益が返ってくるか)が見えないことだ。AI関連企業の利益がどこから来て何が崩れると消えるのかは、AIバブルを「稼ぎすぎ(EPSバブル)」として捉えた記事で掘り下げている。
| 比較項目 | Microsoft(米国市場) | SBG(日本市場) |
|---|---|---|
| OpenAI関連の投資規模 | 累計130億ドル+追加出資 | 累計346億ドル(約5.4兆円) |
| 利益の中身 | Azure経由のクラウド売上が出ている | 大部分が未実現の評価益 |
| 決算後の株価 | 翌日10%安、2週間で17%安 | 夜間取引で6%高の後、翌日8.9%安 |
| 売り材料 | 設備投資の大きさと回収時期 | 評価益の中身と4連騰後の利益確定 |
Microsoftは少なくともAzure経由でOpenAI向けのクラウド売上を得ているが、それでも投資の回収が遅いと売られた。SBGの利益は売却を伴わない評価益が中心で、現金が入る時期はMicrosoftより見えにくい。
4つのリスク:一点集中・評価額・訴訟・売りにくさ
SBGはOpenAIへの投資をさらに増やす方針で、2026年1月には最大300億ドル(約4.6兆円)の追加出資の協議が報じられた(会社は2月12日の時点で決まった事実はないと説明)。累計の出資額は346億ドル(約5.4兆円)、持分は約11%になる。
米国内にOpenAI向けのデータセンター・電力・GPUをそろえるStargate構想も進めている。データセンターは資金があるだけでは建たず、メモリ・電力・光部品の供給制約は生成AIの供給網のボトルネックを調べた記事で整理したとおりで、構想の実行の速さを縛る。
- 一点集中: 保有資産の大半がAI関連で、OpenAI1社の評価額で連結利益の大半が決まる。評価額が下がれば、利益を膨らませた会計の仕組みが逆に働き、評価損が損益に出る
- 評価額の持続: 5,000億ドルは第三者の売買で付いた値で、SBG自身も「未上場企業として世界最大級」と呼ぶ水準にある。Google・Anthropic・Metaとの競争が続けば、この評価が保たれる保証はない
- 訴訟: OpenAIは2025年10月に営利部門をOpenAI Group PBCとする資本再編を終え、SBGの持分も優先株式に変わった。ただしマスク氏が営利化をめぐって起こした訴訟は2026年春に陪審裁判を控え、結果次第で持分の評価に影響が及ぶ可能性がある
- 売りにくさ: 未上場なので、上場か二次取引でしか現金にできない。SBGが大量に売ろうとすれば、その売り自体が値段を下げる
まとめ:評価益の増減より現金に変わる道筋
純利益3.1兆円は、OpenAIの評価額が上がった分を会計のルールどおりに利益にした数字で、現金も税金の支払いもまだ動いていない。翌日の8.9%安は、市場がその中身を見た結果と読める。
個人的には、次に見るのは評価益の増減より、現金に変わる道筋だと考えている。OpenAIの上場時期の発表、追加出資300億ドルの正式な合意、四半期決算での評価額の下方修正のどれかが出たとき、この株の見方は変わる。5月の本決算では、評価益の額よりも、売却や上場に関する開示があるかを確かめる。
出典: ソフトバンクグループ「2026年3月期 第3四半期決算短信」(2026年2月12日)、同 決算説明会資料、Microsoft 2026年度第2四半期決算リリース(2026年1月28日、SEC提出)、CNBC「Microsoft (MSFT) Q2 earnings report 2026」、Reuters「OpenAI expects business to burn $115 billion through 2029」(2025年9月6日)
※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。