サンリオ(8136)は2月12日、4〜12月の営業利益623億円(前年同期比51.8%増)と同時に、今期3度目の通期上方修正、年間配当66円への増配、1対5の株式分割を発表し、翌13日の株価はストップ高の5,464円で引けた。
利益を押し上げたのは海外のライセンス収入で、修正後の通期予想751億円は、残る1〜3月期に前年比19%増を見込む水準にある。10〜12月期の3か月の伸びは33%まで鈍っていて、会社の予想は控えめだが、上期のような伸びまでは織り込んでいない。分割で100株の値段は約11万円になり、新NISAで買いやすくなる。
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上方修正、増配、そして1対5の株式分割。サンリオ(8136)が2026年2月12日の引け後に出した第3四半期決算には、個人投資家が喜ぶ材料が3つそろっていた。翌13日の株価は買い注文が残ったまま値幅制限の上限で引け、前日比700円高(14.7%高)の5,464円になった。日経平均が700円近く下げた日のストップ高だった。3つの材料をひとつずつ確かめ、会社の通期予想がどこまで控えめなのかを数字で見る。
翌日は寄らずのストップ高、10月の高値からは4割安の水準
2月13日のサンリオ株は、前日終値4,764円に対して買い注文が積み上がったまま取引時間中は値が付かず、大引けの配分で上限の5,464円になった。出来高は238万株で、普段の半分以下しかない。売りたい人がほとんどいなかった、という一日だった。日本経済新聞はこの上げを「上方修正を好感」と報じている。
この決算の前まで、株価は下げ続けていた。手元の株価データで見ると、2025年10月3日の高値7,970円から2026年1月21日の4,500円まで44%下げている。11月5日の第2四半期決算でも通期予想を上方修正したのに、翌6日の株価は13.8%下げた。同じ「上方修正」で反応が正反対になった理由は、次の節で見る決算の中身と、株価がすでに4割下げていたことの両方にある。
需給も重かった。2月6日時点の信用買い残は約1,380万株で、売り残の32倍あった。信用買い残が多い株は、上がると返済の売りが出やすい。それでも13日は買いが売りを押し切った。
4〜12月の営業利益は51.8%増、通期予想は今期3度目の引き上げ
| 項目 | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,431億円 | +36.7% |
| 営業利益 | 623億円 | +51.8% |
| 経常利益 | 634億円 | +48.7% |
| 純利益 | 436億円 | +29.3% |
売上が36.7%増えるなかで営業利益は51.8%増えた。利益の伸びが売上の伸びを上回った理由は、原価のかからない海外のライセンス収入が増えたことにある(次の節)。営業利益率は43.6%と、商品を自分で作って売る会社では出ない高さになった。
ただ、伸びは3か月ごとに鈍っている。営業利益の前年同期比は4〜6月が88%増、7〜9月が48%増、10〜12月は33%増(232億円)だった。累計の51.8%は上期の高い伸びが押し上げた数字で、直近3か月の勢いは3割増と読むほうが実態に近い。
通期予想は期初の600億円から3回引き上げて751億円
| 項目 | 前回予想(11月5日) | 修正後 | 修正率 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,843億円 | 1,906億円 | +3.4% | +31.5% |
| 営業利益 | 702億円 | 751億円 | +7.0% | +45.0% |
| 経常利益 | 713億円 | 764億円 | +7.2% | +42.9% |
| 純利益 | 494億円 | 520億円 | +5.3% | +24.6% |
今期の通期予想は、期初(2025年5月)の営業利益600億円から、8月8日に673億円、11月5日に702億円、そして今回751億円へと3回引き上げられた。年間配当の予想も54円、60円、62円、66円と、そのたびに増えている。同じ期に3回も上げるのは、会社が期初の見通しを固めに置いているからだ。なお、上方修正の発表翌朝に買った場合を過去8年分で集計すると、超過リターンは出ていない。飛びつく前に、修正の中身が続くものかを見るほうがいい。
利益を押し上げたのは海外のライセンス収入
地域別に見ると、5地域すべてが増収増益だった。海外の連結子会社は決算期が1〜12月なので、下の表の海外4地域は2025年1〜9月の実績で、日本だけが4〜12月の数字になる。
| 地域 | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 852億円 | +34.1% | 406億円 | +48.8% |
| 欧州 | 79億円 | +128.3% | 23億円 | +163.4% |
| 北米 | 188億円 | +3.2% | 58億円 | +13.1% |
| 南米 | 22億円 | +98.5% | 6億円 | +59.0% |
| アジア | 288億円 | +57.6% | 149億円 | +72.1% |
海外でサンリオが得ている収入の中心は、ライセンス先の会社が払うロイヤリティ収入だ。キャラクターを使った商品が売れると、その売上の数%が使用料としてサンリオに入る仕組みで、サンリオ自身が商品を作って売るわけではないので、売上が増えても原価や販売費はほとんど増えない。アジアの売上288億円のうち69%がこの収入で、海外の売上が伸びるほど全社の利益率が上がる理由はここにある。
欧州は売上2.3倍、アパレルと玩具が牽引
欧州は売上が前年同期の2.3倍、営業利益は2.6倍になった。会社が挙げる要因は、ファストファッションのブランドと組んだアパレルと、複数のキャラクターが採用された玩具で、世界規模のブランドとの取り組みが売上を押し上げたと説明している。
アジアは中国のライセンスが中心、売上を上回る利益の伸び
アジアは売上が57.6%増、営業利益は72.1%増と、利益の伸びが売上を上回った。中国ではトイ・ホビー、アパレルとアクセサリー、企業向けの特販でライセンスの売上が伸び、物販も2.2倍になった。韓国、台湾、香港、東南アジアも増収だった。
日本は全社利益の過半を稼ぎ、テーマパークは客単価で増収
日本は売上852億円、営業利益406億円で、いまも全社利益の過半を稼ぐ。サンリオピューロランドの来園者は10〜12月に35万7千人と前年(36万8千人)をやや下回ったが、パレードの刷新などで客単価が上がり、テーマパークの売上は14%増えた。直営店では東京キャラクターストリート店と原宿店の新店が計画を大きく上回り、国内のライセンスは周年を迎えたキャラクターを中心に利益が66%増えた。
北米は小さな伸びでも定着した黒字
北米は売上3.2%増、営業利益13.1%増と、ほかの地域より伸びが小さい。ただ北米は2018年3月期から2022年3月期まで5期続けて営業赤字で、2023年3月期に7億円で黒字に転じた事業だ。前期は88億円、今期の1〜9月で58億円を稼いでいて、赤字の時代とは別の事業になっている。
残る1〜3月期は前年比19%増の予想、10〜12月期の伸びより低い水準
営業利益は9か月で通期予想の83%を稼いだ。残る1〜3月期に必要な額は751億円から623億円を引いた約127億円で、前年の1〜3月期の107億円(前期通期518億円から前年4〜12月の411億円を引いた額)と比べると19%増になる。会社の予想は、1〜3月期にも2割近い増益を織り込んでいる。
それでも控えめだと見る理由は、直近3か月の伸びが33%だったことにある。1〜3月期も同じ3割増なら約140億円で、通期は765億円前後まで届く。会社の751億円はその手前に置いてある。個人的には、もう一段の上振れがあっても驚かない。ただし伸びは前の節で見たとおり四半期ごとに鈍ってきているので、上期のような勢いを前提にはしない。
1対5の分割で100株が約11万円に、優待は電子化
発表前日の2月12日の終値では、100株を買うのに47.6万円が要った。会社は分割の理由に、この水準が「個人投資家の求める投資単位の水準(10万円)」を大きく上回っていることを挙げている。東証が望ましいとする投資単位は50万円未満で、サンリオはその上限の近くにいた。
分割後の株価は2月13日の終値で換算すると1,093円になり、100株で約11万円になる。新NISAの成長投資枠(年240万円)でも、ほかの株と分けて買いやすい。ただし、分割そのものが株価を押し上げるわけではない。株式分割530件を集計すると、分割後の株価は平均こそプラスだが、半分以上の銘柄がTOPIXに負けていた。
優待は電子チケットへ、分割後も100株で受け取れる条件
株主優待も変わる。紙で送っていたテーマパークの優待券と株主優待券は、2026年3月末の株主から、会員アプリ内の電子チケットと電子クーポンに置き換わる。分割後の株数の区分が適用されるのは2026年9月末の株主からで、100株以上(分割前の20株に相当)ならテーマパークの優待券1枚、500株以上ならサンリオショップとオンラインショップで使える1,000円の割引クーポンも付く。クーポンの代わりに同額を寄付する選択もあり、分割前は100株が優待の最低ラインだったので、条件は実質的に緩くなった。
配当は年間66円、配当性向は方針どおりの30%
| 項目 | 前期実績 | 今期予想(修正前) | 今期予想(修正後) | 増減 |
|---|---|---|---|---|
| 中間配当 | 20円 | 31円 | 31円(実績) | — |
| 期末配当 | 33円 | 31円 | 35円 | +4円 |
| 年間配当 | 53円 | 62円 | 66円 | +4円 |
年間配当は前期の53円から66円へ、13円(24.5%)の増配になる。修正後の1株あたり利益215.84円で割ると配当性向は30.6%で、前期の30.0%とほぼ同じ水準だ。
会社は2025年5月の中期計画の見直しで「配当性向30%以上」を掲げ、良い投資先が見つからなければ最大300億円の追加の株主還元を検討するとしている。今回の増配は利益の伸びに配当を合わせたもので、方針より多く出しているわけではない。分割後の1株配当は単純計算で13.2円相当になるが、今期の期末配当は分割前の株数を基準に払われる。
1年早く超える中期計画の最終年度の目標
サンリオの中期経営計画は2025年3月期から2027年3月期までの3年間で、最終年度の営業利益の目標は650億円以上だ。この目標は2025年5月に400億円から引き上げたもので、今期の修正後予想751億円はそれを1年早く上回る。さらに長い目標として、会社は10年平均で営業利益を年10%以上伸ばすと明言している。2025年3月期の518億円を起点に10%成長が10年続けば、2035年3月期の営業利益は約1,340億円になる。10年で2.6倍という計算だ。
計画の柱は3本ある。1本目は「Evergreen」と名付けたキャラクターの育て方で、認知度と好感度が常に新鮮な状態に保たれたIP(知的財産)を作ることを指す。中身は、大型の周年イベントやYouTubeチャンネルの連携といった世界向けコンテンツへの投資、世界規模でのブランドの監修、現地に合わせたデザインの強化の3つだ。
2025年7月にNetflixで世界配信されたアニメ「My Melody & Kuromi」はこの流れの一例で、クロミやシナモロール、ポムポムプリンなど複数のキャラクターが地域ごとに支持を集めている。2本目は世界での成長基盤づくり、3本目はキャラクターの品ぞろえを増やして収益化の手段を多層にすることだ。
リスクは人気の持続と中国、円高、分割後の需給
注意しておきたい点
- キャラクター人気の持続: 個人的に一番気にしているのはここだ。人気の移り変わりは速く、いま伸びているキャラクターの支持がいつまで続くかは読めない。人気が冷めたときに別のキャラクターで稼ぎ続けられるかが、Evergreenの看板の試しどころになる
- 中国市場: アジアの伸びの中心は中国で、消費の落ち込みや日中関係の変化、現地の競合の台頭で環境が急に変わることがある
- 為替: 海外の売上比率が上がるほど、円高になるとロイヤリティ収入の円換算額が減る
- 分割後の需給(株を買いたい人と売りたい人の力関係): 分割の直後は短期の売買が増え、一時的に値動きが荒くなることがある
この決算の受け止め
本業の伸び、株主への還元、買いやすさの改善が1日にそろった決算で、翌日のストップ高はその3つを同時に好感した結果だと受け止めている。中身で見るなら、欧州とアジアのライセンス収入が利益率を押し上げ、営業利益率43.6%を出したことが大きい。
一方で、伸びは四半期ごとに鈍っていて、上期のような伸びが続く前提では株価を見ないほうがいい。自分なら、5月の本決算で1〜3月期の営業利益が127億円を超えたか、そして海外の売上が1〜12月分でも伸び続けているかを、決算のたびに確かめる。
出典: サンリオ IRライブラリ(2026年3月期 第3四半期決算短信・決算説明資料、2026年2月12日)、サンリオ「株式分割および株主優待制度の変更に関するお知らせ」(2026年2月12日)、サンリオ「10年間の長期ビジョンと中期経営計画のアップデート」(2025年5月13日)、日本経済新聞「サンリオ株価が一時13%高 26年3月期上方修正を好感」(2026年2月16日)
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