X Facebook LINE Bookmark

芙蓉総合リース(8424) 欧州で284億円の損失を出した後、10〜12月の経常利益は24%増

芙蓉総合リースは、欧州の再エネ関連の損失を7〜9月にまとめて計上し、10〜12月は追加の損失を出さずに経常利益を前年同期より24.0%増やした。通期予想の経常利益380億円に対する進捗は58.5%と低いが、損失を除いて計算すると例年並みに進んでいる。残る心配は、下方修正のときに予想へ織り込んだ米国の再エネ事業のリスクで、損失として出るかどうかは5月の本決算で分かる。

芙蓉総合リース(8424) 欧州で284億円の損失を出した後、10〜12月の経常利益は24%増

2025年10月23日の15時半、芙蓉総合リース(8424)は、欧州の再生可能エネルギー事業に関わる債権で286億円の損失を計上し、通期の経常利益の予想を700億円から380億円に下げると発表した。翌24日の株価は前日比7.5%安の4,126円で引けた。株主として気になるのは、損失がこれで終わるのか、まだ広がるのかだ。

2026年2月6日の14時に出た第3四半期(10〜12月)の決算は、この問いに半分だけ答えている。欧州の案件で追加の損失は出ず、10〜12月の経常利益は前年同期より24.0%多かった。一方で通期予想は据え置かれ、米国の再エネ事業のリスクは残ったままだ。2月6日の株価は4,460円で引け、損失を発表した日の終値に戻った。決算短信と説明資料の数字から、損失の中身と本業の回復の度合いを確かめる。

欧州の損失は7〜9月に計上し、10〜12月の追加はなし

10月23日の開示によると、損失の相手は、芙蓉総合リースのアライアンス先(提携先)が主導する欧州の再エネ事業に資金を出していた会社やファンドだ。スペインの一部のプロジェクトで資金が足りなくなって開発が遅れ、会社は同じアライアンス先が関わる個別プロジェクトの債権をまとめて見直した。会社の説明では、どれも建設が始まる前の開発段階に投じた資金だった。

取り立てられないおそれがある債権(2025年10月23日の開示)
営業貸付金
43億円
連結純資産の0.8%
営業投資有価証券(主に社債)
286億円
連結純資産の5.4%

合計 329億円(連結純資産の6.2%)

329億円のうち、プロジェクトの売却などで回収を見込む分を除いた286億円を、7〜9月期に損失として計上した。科目は売上原価と、販売費及び一般管理費の貸倒引当金繰入などなので、営業利益と経常利益の両方を押し下げている。債権は主にユーロ建てで、円に直した損失の額は為替で動き、12月までの累計では284億円になった。

四半期ごとの経常損益は次のように動いた。

2025年7〜9月(第2四半期)
損失を計上
経常損益は127億円の赤字(前年同期は180億円の黒字)。欧州の損失をこの3か月でまとめて計上した。
2025年10〜12月(第3四半期)
追加の損失なし
経常利益は163億円で、前年同期比24.0%増。7〜9月に244億円の赤字だったファイナンスの事業も、89億円の黒字に戻った。
2026年1〜3月(第4四半期)
未確定
通期予想の経常利益380億円に届くには、約158億円が要る。

経常利益の進捗は58.5%、損失を除けば例年並み

項目 当初予想
(2025/5/9)
修正予想
(2025/10/23)
12月までの
実績
進捗率 過去5年の
平均
営業利益 660億円 340億円 211億円 62.2% —
経常利益 700億円 380億円 222億円 58.5% 74.4%
純利益 460億円 170億円 133億円 78.3% —

過去5年の平均は、2021年3月期〜2025年3月期の各年について、12月までの経常利益が通期の実績に占めた割合を決算短信から計算した(70.5%〜80.0%)。

12月までの経常利益は通期予想の58.5%で、過去5年の同じ時点の平均を16ポイント下回る。ただしこれは、一度きりの損失が12月までの累計に入っているためだ。損失の284億円を、累計と通期予想の両方に足し戻して計算し直すと、進捗は76%(507億円÷664億円)になり、例年と変わらない。

予想に残した余裕は、1〜3月に必要な利益に表れている。通期の380億円に届くには1〜3月に約158億円が要るが、これは10〜12月の163億円より少なく、前年の1〜3月(216億円)より27%少ない。据え置いた予想には、米国のリスクに備えた余裕が残っていると見ている。純利益はすでに予想の78.3%まで進んでいる。

下方修正のうち約34億円は米国の再エネのリスク

10月23日の修正で、経常利益の予想は320億円下がった。欧州の損失286億円を引いた約34億円には、会社が「米国での再生可能エネルギー分野における事業環境悪化のリスク等」と書いた分が入る。金額の内訳は示されていないが、中間期の説明会資料は、北米の再エネ事業で損失を計上するリスクを業績予想に織り込み済みとしている。

米国では2025年7月に成立した税と歳出の法律(One Big Beautiful Bill Act)で、風力と太陽光の発電への税額控除が縮小された。2026年7月4日より後に着工し、2027年末より後に稼働する案件は、控除を受けられない。2022年のインフレ抑制法(IRA)で広がった優遇を前提に計画された案件は、採算を見直すことになる。

欧州の分は計上を終えたが、米国の分はまだ損失として表に出ていない。出るとすれば1〜3月になる。

損失を除くと前年同期より7%多い12月までの経常利益

10〜12月の経常利益は前年同期の131億円から163億円に増えた。会社は、損失を除いた基礎的な収益が資金原価や人件費などの増加を吸収して「順調に推移」したと説明している(第3四半期の決算概要資料)。12月までの累計で損失を除くと経常利益は507億円になり、前年同期の474億円より7%多い。

事業の区分では、リース及び割賦の利益が12月までの累計で前年同期比12.7%増えた。損失を計上したファイナンスは、累計ではまだ92億円の赤字だが、10〜12月だけを見ると89億円の黒字に戻っている。

分野ごとの経常利益は、中間期の説明会資料に4〜9月の値が載っており、損失はエネルギー環境の分野に集中した。

分野 前年の
4〜9月
今期の
4〜9月
会社の説明など
モビリティ/ロジスティクス 40億円 70億円 増益
航空機 54億円 68億円 増益
ヘルスケア 7億円 13億円 増益
BPO/ICT(業務の受託と情報通信) 22億円 22億円 コストが増えて横ばい
不動産 125億円 114億円 資金原価の上昇などで減益
一般リース・ファイナンス 82億円 52億円 減益
エネルギー環境 14億円 ▲279億円 欧州の損失286億円を含む

モビリティ/ロジスティクスと航空機は利益が伸び、不動産は資金を借りる費用の上昇で利益が減り、BPO/ICTは横ばいだった。本業は、伸びる分野と足踏みする分野に分かれている。

中期経営計画の750億円と、21期連続の増配

中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」は、最終年度の2027年3月期に経常利益750億円、ROA 2.5%、ROE 10%以上を目標にしている。ROAは会社独自の定義で、リースや融資に回している営業資産に対する経常利益の割合を指す。ROE(自己資本利益率)は、株主のお金に対してどれだけ利益を上げたかを示す。

中期経営計画の最終年度(2027年3月期)の目標
経常利益
750億円
2025年3月期の実績は690億円
ROA(営業資産経常利益率)
2.5%
ROEは10%以上

会社は10月23日の補足資料で、今回の損失を事業を広げる過程での「一過性の損失」と呼び、中期経営計画の目標は引き続き達成を見込むとした。第3四半期の時点でも目標は見直していない。

750億円は、今期の予想380億円のほぼ2倍にあたる。ただ、欧州の損失を除いた今期の予想は664億円(380億円+284億円)で、ここには米国のリスクの見込みも入っている。そこから13%、前期の実績690億円からなら9%伸びれば届く。届くかどうかは、利益の伸びより、損失がここで止まるかどうかで決まる。

配当は、損失を出した後も期初の予想の年158円(中間79円、期末79円)を据え置いた。前期の配当は分割前で455円で、2025年4月1日の株式分割(1株を3株に)で換算すると151.67円なので、約6.3円の増配になる。2004年12月の上場から毎期増配を続けており、予想どおりなら21期連続になる。

利益が減ったぶん、配当性向(純利益のうち配当に回す割合)は会社の予想で83.8%まで上がる。1株当たり純利益の予想は188.52円で、2月6日の終値4,460円で計算した配当利回りは3.5%だ。会社は、利益の大半を配当に回してでも増配を続けることを選んだ。

5月の本決算で確かめること

  • 米国の再エネのリスク: 予想に織り込んだ分が1〜3月に損失として出るか。出るなら、約34億円の範囲に収まるか
  • 来期の予想: 中期経営計画の750億円を、そのまま2027年3月期の予想に置くか
  • 金利の上昇: 資金を借りる費用が上がっても、リース料や貸出の金利に上乗せできれば利ざやは保てる。不動産の分野は、すでに資金原価の上昇で減益になった。金利の影響は、後日、リース3社の事業戦略と景気感度を比べた記事で掘り下げた
  • 海外案件の管理: 会社は中間期の説明会で、原因の分析と、監視・管理の手順の見直しを進めていると説明した。第3四半期の資料でも「リスクガバナンス強化を推進」と書いたが、何をどう変えるのかはまだ示していない

損失の説明で「アライアンス先が主導する」という言い方が引っかかる。スペインの案件で資金が足りなくなったのは相手側の事情でも、資金を出すと決めたのは芙蓉総合リース自身だ。会社も、投資先のプロジェクトは分散していたが、案件を主導するアライアンス先の単位では一定程度の集中があったと認めている。提携先ごとに出す資金に上限を設けるのか、建設前の案件への投資を絞るのか。自分は本決算の説明で、その具体策が出てくるかを見るつもりだ。

※本記事は公開情報に基づく情報整理であり、個人の見解を含みます。特定の銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

POPULAR ARTICLES